2011 Fiscal Year Annual Research Report
有機受発光素子の三重項励起子挙動の起源と過渡特性の定式化に関する基礎研究
Project/Area Number |
22686033
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
梶井 博武 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助教 (00324814)
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Keywords | 電子・電気材料 / 電子デバイス / 有機導体 / 分子性固体 / 光物性 / 有機受発光素子 |
Research Abstract |
従来の非晶性正孔輸送材料に比べ一桁大きい正孔移動度1.0×10^<-2>cm^2/Vsを有し、素子の低電圧化が期待できる材料を発光層に用いて高速応答性を持つ青色蛍光を得ることができ、燐光材料をドープすることにより赤色燐光が得られ、その応答性は燐光再結合寿命に律速された。また、燐光素子として印刷プロセス可能な種々のホスト材料を検討し、比較的高い三重項準位を有する材料と可溶性の高い材料との複合薄膜をホストとして用いることで、外部変換効率が約7%以上で3万cd/m^2の高輝度発光素子を実現した。ただし、過渡特性の立ち下がり時間が、ホスト材料に依存する発光材料の燐光寿命と発光層からの残留キャリアの乖離に大きく依存しており、素子の遮断周波数に大きな影響を及ぼしており、ホスト材料の更なる検討が必要であることが分かった。また、塗布法により作製した多層高分子ELに関する発光特性について、インピーダンス分光法を含めた過渡応答解析によりキャリアの輸送機構を検討することで、素子内部のキャリアの輸送機構と高効率化との因果関係が示された。特に過渡特性における負のキャパシタンスの影響が大きいことが示された。 有機受光素子の変換効率を向上させる手段として、励起子寿命の長い三重項励起子の利用を検討し、三重項材料のドープによる共役ポリマーを受光層に用いたポリマー受光素子の特性改善とその応用を検討した。本研究では、三重項準位や燐光寿命の異なる種々のIr錯体やPt錯体を用いて、燐光寿命や蛍光の消光に関する光学特性を評価した。溶液プロセスによる積層型素子の実現と、ホスト・ゲスト材料間のエネルギー準位を考慮することで、変換効率を向上させ、バイアス印加時の遮断周波数が、数十MHzの素子を実現した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
インピーダンス分光法を含めた過渡応答解析によりキャリアの輸送機構を検討することで、素子内部のキャリアの輸送機構と高効率化との因果関係が示され、特に過渡特性における燐光再結合寿命と負のキャパシタンスの影響が大きいことが示された。従来の非晶性正孔輸送材料に比べ一桁大きい正孔移動度を有する材料による低電圧化と高効率化に向けた検討も進めている。また、ホストの一重項準位より低く、三重項準位をより高い準位を有する三重項準位を有する三重項材料を用いることで、共役ポリマー材料への三重項材料のドープにより、拡散長の長い三重項励起子を生成や蛍光の消光が生じ、受光素子の変換効率を向上させることが示された。
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Strategy for Future Research Activity |
主に下記の有機受発光素子の作製及び解析を行ない、三重項励起子挙動に関連した物理現象を明らかにする。 1.有機発光素子の変調電流印加による過渡特性解析を行う。高電流領域で観測される三重項-三重項消滅と過渡特性の関係を調べ、電流密度と応答の関係、すなわち励起子密度と素子の遮断周波数の関連性を明らかにする。 2.有機発光素子の駆動に伴う劣化前後における過渡応答解析を行う。蛍光有機EL素子と燐光有機EL素子における電流駆動時における劣化による挙動解析を、インピーダンス分光測定による回路定数の算出と過渡応答特性評価から検討する。 3.有機受光素子への光照射による過渡特性及びインピーダンス分光測定を行う。Π-π*遷移やML、CT遷移に基づく燐光材料の導電性高分子への添加効果を過渡特性評価により明らかにする。
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