2012 Fiscal Year Annual Research Report
有機受発光素子の三重項励起子挙動の起源と過渡特性の定式化に関する基礎研究
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22686033
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
梶井 博武 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00324814)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 電子・電気材料 / 電子デバイス / 有機導体 / 分子性固体 / 光物性 / 有機受発光素子 |
Research Abstract |
燐光素子として印刷プロセス可能な三重項準位の高いカルバゾール系のホスト材料を用い、比較的高い三重項準位を有する材料と可溶性の高い材料との複合薄膜をホストとして用いることで、塗布型燐光有機EL素子の高効率化を検討した。正孔・電子輸送性材料、正孔注入層の電気伝導の解析を、インピーダンス分光法により行い、最適化を行った。正孔注入層部分の改善により印刷プロセスにより作製した燐光有機EL素子の効率の大幅改善が見出され、外部変換効率が約13%以上の高効率緑色発光素子を実現した。 有機-電極界面を変化された種々の有機EL素子を作製し、有機EL素子の電流駆動時における劣化による挙動解析を、インピーダンス分光測定による回路定数の算出と過渡応答特性評価から検討を行った。劣化前後における等価回路の変化とその回路定数の変化から、劣化前後におけるキャリア挙動や励起子挙動の変化を明らかにすることが可能であることが示唆された。 有機受光素子の変換効率を向上させる手段として、励起子寿命の長い三重項励起子の利用を検討し、三重項材料のドープによる共役ポリマーを受光層に用いたポリマー受光素子の特性改善とその応用を検討した。ホスト・ゲスト材料間の三重項エネルギー準位を考慮することで、受光素子の変換効率を向上させ、過渡特性評価から画像伝送が可能な光センサー応用が可能であることを実証した。特に、光センサーや撮像素子応用には、ON/OFF比の確保、すなわち電圧印加時の暗電流低減が必要不可欠である。ある種の自己組織化単分子膜を透明電極に処理することで、電極/有機層界面の改善により大幅に特性改善が図られる指針が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
インピーダンス分光法を含めた過渡応答解析によりキャリアの輸送機構を検討することで、電極と有機界面での劣化の影響を含めた等価回路の推定が可能となった。さらに低分子複合ホストを用いた塗布型燐光有機EL素子において、キャリアバランスの整合、正孔注入層による励起子消光を抑制するために、正孔・電子輸送性材料、正孔注入層の電気伝導の解析を、インピーダンス分光法により行い、最適化することで、塗布型燐光有機EL素子の高効率化が示された。 また、三重項材料を用いることで、共役ポリマー材料への三重項材料のドープにより、拡散長の長い三重項励起子の生成や蛍光の消光が生じ、受光素子の変換効率を向上させ,過渡特性評価から画像伝送が可能な光センサー応用が可能であることを実証した。さらに、応用面から重要な電圧印加時の暗電流低減を図る手法として、ある種の自己組織化単分子膜を透明電極に処理することで、電極/有機層界面の改善により大幅に特性改善が図られる指針が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
主に真空プロセスと溶液プロセスの有機受発光素子の作製及び解析を行ない、三重項励起子挙動に関連した物理現象を明らかにする。 1. 有機発光素子の変調電流印加による過渡特性解析を引き続き行う。高電流領域で観測される三重項-三重項消滅と過渡特性の関係を調べ、電流密度と応答の関係、すなわち励起子密度と素子の遮断周波数の関連性を明らかにする。 2. 有機発光素子の駆動に伴う劣化前後における過渡応答解析を含め、等価回路の推定と回路定数の変化から、素子内部のキャリア挙動について明らかにする。特に、蛍光有機EL素子と燐光有機EL素子における電流駆動時における劣化による挙動解析を、インピーダンス分光測定による回路定数の算出と過渡応答特性評価から検討する。 3. 比較的高い三重項準位を有する可溶性カルバゾール系低分子材料を燐光ホストとして用いた有機EL素子を溶液プロセスにより作製し、その特性を過渡特性も含め解析することで、溶液プロセスにおける高効率化の指針を明らかにする。 4. 有機受光素子への光照射による過渡特性及びインピーダンス分光測定を行い、等価回路を推定し、光照射による回路定数変化に関して明らかにする。特に、光センサーや撮像素子応用には、ON/OFF比の確保、すなわち電圧印加時の暗電流低減が必要不可欠である。昨年度電極/有機層界面の改善により大幅に特性改善が図られる指針が得られたことから、素子構造変化に伴う回路定数の変化と、暗電流との関係をインピーダンス分光から明らかにする。また、引き続きπ-π*遷移やMLCT遷移に基づく燐光材料の導電性高分子への添加効果を、薄膜の関する蛍光寿命の測定を行い、遷移過程に関する知見を得る。
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