2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22686067
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大野 宗一 北海道大学, 大学院・工学研究院, 准教授 (30431331)
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Keywords | 微細粒鋼 / 鋳造・凝固 / シミュレーション / 包晶反応 / 共析反応 |
Research Abstract |
本研究は、包晶反応を利用した凝固組織制御とその後の熱処理のみによって、包晶鋼のオーステナイト粒組織をサブミクロンレベルまで微細化することを目的とする。特に、(a)Ti,Nb,V等の炭窒化物等を利用した凝固組織微細化法の発展と、(b)微細凝固組織を初期組織とする固相変態カイネティクスにおける結晶粒微細化技術への展開、を試みるものである。 平成23年度においては、得られた知見を以下にまとめる。 (a)凝固組織微細化法の発展 包晶凝固鋼の鋳片オーステナイト粒組織が不連続粒成長によって粗大化することを明らかにし、その粗大化防止の条件をシミュレーション及び理論から提案した。その実証実験の一環として、鋳片組織の粗大化が著しい0.2mass%炭素鋼を対象として、炭窒化物安定化元素のNbを添加することでNb(C,N)のピン止め効果が発現して粗大粒の成長が妨げられ、鋳片組織が微細化できることを示した。また、本年度の成果において特に重要な点は、本来、包晶反応を示さないような鋼種であっても、δフェライトの核発生サイトとして働くTi(C,N)を溶鋼中に存在させることで、包晶反応を誘起し、鋳片組織を劇的に等軸微細化させることができることを明らかにした点にある。したがって、本研究で得られた微細化指針は、包晶凝固鋼以外の鋼種にも適用しえる可能性が示された。 (b)鋳片組織からの逆変態による微細化の調査 Ti添加鋼を対象として、逆変態過程におけるオーステナイト組織の微細化過程を調査し、高昇温速度で繰り返し変態を行うことで、初期の鋳造組織が粗大であっても、数ミクロンのサイズまでオーステナイト粒が微細化することが示された。したがって、(a)で得られた知見をもとに、逆変態前の初期組織が微細な鋳片を使用することで更なる微細化効果が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
凝固組織制御において、鋳片オーステナイト粒組織の粗大化メカニズムを明らかにすることで、その粗大化を防止する条件が明確になり、微細化指針を発展させることができた。特に、高温で安定な炭窒化物形成元素の添加が微細化に有効であることを示し、さらにはTi添加がオーステナイトモードで凝固する鋼種においても包晶反応を誘発し、オーステナイト粒組織の等軸微細化を達成できることを明らかにした点は、当初の予定よりも優れた成果が挙げられたと考える。また、鋳片組織からの逆変態過程を利用した微細化方法の発展に関しては、主にTi添加鋼を対象として当初の計画通りに研究が進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、平成23年度までに得られた凝固組織制御法と逆変態微細化法を組み合わせ、本研究の最大の目的である最終組織の超微細化を試みる。必要に応じて、組織形成シミュレーションや理論解析を活用することで、熱処理条件の最適化を効率的にはかり、当初の計画通りに研究する予定である。
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