2011 Fiscal Year Annual Research Report
超低電力マイクロ波放電式イオン源を用いた革新的小型プラズマ宇宙推進機の実現
Project/Area Number |
22686080
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小泉 宏之 東京大学, 先端科学技術研究センター, 准教授 (40361505)
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Keywords | イオンエンジン / 超小型衛星 / プラズマ / マイクロスラスタ / 実宇宙機搭載 / 推力ノイズ |
Research Abstract |
本研究の目的は次世代小型衛星に必須の低電力・高比推力・高効率・高速応答/静推力という革新的な小型プラズマ宇宙推進機を実現させる事である.この中で,平成23年度の目的として以下の4つを設定した.つまり,1)ビーム加速可視化イオンエンジンの設計構築,2)非加速可視化プラズマ生成室における空間プラズマ密度分布測定方法の確立,3)ビーム加速可視化イオンエンジン,4)エンジン専用真空装置の構築,である. また,特筆事項として,本研究の全体計画において宇宙飛翔機会・産業応用機会を求めていくことを掲げていたが,平成23年度の活動中に50kg級超小型衛星において本小型イオンエンジンを実証する機会を得ることに成功した.具体的には,「超小型衛星による新しい宇宙開発・利用パラダイムの構築(略)」のほどよし衛星4号への搭載に向けた開発が動き出した.これに伴い研究計画全体における順序の変更を実施した. 平成23年度には,当初計画における1),3),4)を達成した.また,計画変更に伴って設定した目的:5)イオンビーム測定による推力ノイズ原因の解明とノイズ抑制,6)静電プローブ法による下流プラズマ密度分布の測定,7)民生品利用による実機用ガス供給システムの実証,を達成した.なお,目的2)は平成24年度以降の課題と計画変更した.1)および3)の達成により24年度以降,ビーム加速状態において放電室プラズマ密度分布の測定を実施することが可能となった.4)の達成により小型イオンエンジンの長時間作動(無人運転)が可能となった.5)では,ノイズ要因がマイクロ波出力の安定度にあることを突き止め,フィードバック回路によって重力波検出衛星において要求される1μN/√Hzという低推力ノイズ性能を満たした.6)では実機搭載において要求される中和状態とプルーム発散角の関係を明らかにすることに成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
50kg級超小型衛星の搭載による実利用の機会を得ることできたのは特筆すべき事項である.同衛星計画が進む2013年末に打ち上げおよび実証が達成されれば世界初の超小型衛星によるイオンエンジン利用となる.革新的な小型プラズマ宇宙推進機の実現には宇宙作動実績が不可欠であったが,その機会を掴める状態にすることが本研究の大目的の1つであった(衛星開発自体は本研究でカバーできる範囲にないため).この機会を得ることができたことは非常に意義が大きい.また,研究計画自体も(計画順序の変更はあるが),当初計画以上の事項を達成している.
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Strategy for Future Research Activity |
超小型衛星への作動実証機会を得ることができたため,実利用を意識した研究の遂行が可能となった.これまでの宇宙工学における研究は,実利用機会の乏しさから研究と実用が離れてしまうことが多々あった.本研究では,その点を衛星プロジェクトのための開発とリンクさせながら解決することができ,革新的な小型プラズマ宇宙推進機を実現させるために研究を実施する.具体的には,システム側からの要望を受けて研究方向を逐次修正/決定していく(短期および長期視点の両者で).
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