2011 Fiscal Year Annual Research Report
トミヨ属魚類における生殖隔離強化の集団ゲノム学的検証
Project/Area Number |
22687006
|
Research Institution | National Fisheries University |
Principal Investigator |
高橋 洋 独立行政法人水産大学校, 生物生産学科, 助教 (90399650)
|
Keywords | 種分化 / トミヨ属 / 集団ゲノム学 |
Research Abstract |
本研究は,種分化研究において長年にわたって議論の的となっている形質置換と生殖的隔離の強化について,トミヨ属魚類近縁2種(イバラトミヨとトミヨ)の同所的・異所的集団をモデル系として,ゲノム科学と集団遺伝学を結びつけた集団ゲノム学的手法を用いて実証的に検証することを目的とする。本年度は,これら近縁2種の雑種F1とイバラトミヨを交配した戻し交配家系12家系について,婚姻色を呈した雄の巣作り行動および生殖腺の観察を行い,交配前隔離機構である巣の位置と"巣の外側の糊付け行動",および交配後隔離機構である不稔現象について分離様式と形質値を得た。また,これらの雄についてAFLP法により連鎖地図作成を行い,その結果22連鎖群(LG)が推定された。各生殖隔離形質についてQTLマッピングを行ったところ,巣の位置に関して有意なQTLが見出されたものの,糊付け行動と不稔に関しては主要なQTLを見出すことができなかった。今後はこれら2形質についてもQTLが捉えられるよう解析個体数をさらに増やしていく必要がある。一方,異所的生息地の集団サンプリングに関しては,デンマークよりイバラトミヨの淡水性集団と汽水性集団,それぞれ2集団ずつを採集し,DNA標本を持ち帰るとともに,受精卵を持ち帰り同一環境で成魚まで育てた。これら飼育集団について巣作り行動を同所的2種と比較したところ,両者の中間的な巣作り行動を示し,同行動に生態的形質置換が起きていることが推定された。現在,異所的集団と同所的集団間で交配家系を作成し,両者間の巣作り行動の違いにかかわるQTL分析を行う準備を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初最も注目していた行動要素である"巣の外側の糊付け行動"に関して主要なQTLを見出すことができなかったことから,同所的集団と異所的集団間においてQTLマーカーと中立的遺伝マーカーの遺伝分散の比較に基づく淘汰圧の検出という研究段階に進むことができていない。
|
Strategy for Future Research Activity |
巣作り行動の違いを生み出す行動要素のうち,すでに主要なQTLが推定されている巣の位置については,集団ゲノム学的分析を行う。一方,"巣の外側の糊付け行動"については,同所的集団と異所的集団間の交配実験を新たに行い,QTLマッピングを行う。
|