2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22689045
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中澤 徹 東北大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (30361075)
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Keywords | 緑内障 / 視神経乳頭循環不全 / 乳頭陥凹拡大 / 軸索流障害 / Laser Speckle Flowgraphy / 酸化ストレス / Nrf2 |
Research Abstract |
失明原因の第一位である緑内障は、今後も進む少子高齢化社会において有病率が増加傾向にある重要な眼疾患である。高眼圧は緑内障の主要因の一つであり、眼圧下降を促す治療が行われている。しかしながら我が国では眼圧が正常でも神経節細胞が障害される正常眼圧緑内障を発症し、視力を失う患者が多い。本研究では眼圧に依存しない新しい着眼点に基づく病態解明、診断法、神経保護治療の確立を目指した。 まず臨床研究として緑内障患者の乳頭循環不全に着目し、Laser Speckle Flowgraphyを用いて、Generalized Enlargement(GE)型視神経乳頭を有する緑内障群と視神経乳頭陥凹拡大のみを有する群、正常群の視神経乳頭部の血流を測定した。正常群に比較して視神経乳頭陥凹拡大群とGE型緑内障群は有意な血流低下を認め、視神経乳頭陥凹の拡大に視神経乳頭血流が関与する可能性が示唆された。さらに健常者における視神経乳頭部の血流波形形状を解析した。血流波形の形状変化と年齢に強い相関を認め、緑内障の発症と進行にも影響する加齢の指標となる可能性が示唆された。 次に基礎研究として正常眼圧緑内障モデルとして前年度に確立した軸索流障害で発現される分子を詳細に検討した。障害を受けた網膜視神経節細胞を単離して酸化ストレスの無毒化に関わる分子群(HO-1等)の発現が確認された。また酸化ストレス応答の遺伝子発現をつかさどる転写因子、Nrf2-OKマウスに対して同様の障害を与えたところ有意に細胞死が亢進された。そこで抗酸化作用を有する薬剤2剤をこのモデルに供したところ有意に網膜神経節細胞死が抑制されることを確認した。 緑内障診断における眼底血流評価の有効性、網膜神経節細胞死の抑制への酸化ストレス防御機構の関与、そして抗酸化物質の網膜神経節細胞保護能が明らかとなった。これらは眼圧に依存しない緑内障の病態解明、早期診断、そして神経保護治療の実現の一助となる知見である。
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