2011 Fiscal Year Annual Research Report
複数右辺項をもつ連立一次方程式の高速・高精度求解法の開発と科学技術計算への応用
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22700003
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
多田野 寛人 筑波大学, システム情報系, 助教 (50507845)
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Keywords | Block Krylov部分空間反復法 / 連立一次方程式 / 複数右切ベクトル |
Research Abstract |
本研究課題では,複数右辺ベクトルをもつ大規模連立一次方程式を解くための高速・高精度数値解法の開発を目的としている.このような連立一次方程式に対する反復解法として,Block Krylov部分空間反復法があるが,右辺ベクトル数が多い場合は近似解の精度劣化の発生や,数値的不安定性により近似解が得られない場合がある.そのため,より頑健で高精度近似解を生成する解法の開発が必要とされている.平成23年度は,「積型」と呼ばれるカテゴリに属するBlock Krylov部分空間反復法の高精度化・安定化に重点をおき,研究を行った.研究代表者のこれまでの研究で開発されたBlock BiCGGR法は高精度近似解が生成可能であるが,右辺ベクトル数が増加すると数値的に不安定になり近似解が得られない場合があったBlock BiCGGR法における数値的不安定性の原因の解析を行った結果,反復過程で現れるベクトルの線形独立性が失われることが原因であることが明らかになった.この現象を回避するために,Block BiCGGR法の残差行列に直交化を施した新たな解法Block BiCGGRRO法を開発した.残差行列の直交化を行うことにより,反復過程で発生した数値的不安定性を抑制することに成功し,多くの右辺ベクトル数をもつ方程式を高精度かつ安定に解くことが可能になった. 他のBlock積型Krylov部分空間反復法の研究として,GPBiCG法のブロック版解法の開発,及びその安定化・高精度化を行った.GPBiCG法は一般に高い収束性を示すため,GPBiCG法のブロック版解法も高い収束性を示すことが期待された.しかしながら,Block BiCGGR法と同じく数値的に不安定になり,得られる近似解の精度も非常に悪いことが明らかになった.近似解の精度劣化の原因解析を行い,漸化式を再構築することで高精度近似解が生成可能となり,より高い収束性をもつBlock Krylov部分空間反復法を構築することができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の研究を通して,高精度近似解を生成し数値的不安定性を抑制できるBlock Krylov部分空間反復法を構築できたため,「おおむね順調に進展している」と評価する.
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は,Block Krylov部分空間反復法の数値的不安定性について,より踏み込んだ解析を行う.不安定性の原因をより解析することで更なる収束性の改善のための糸口を見いだし,解法の改良に繋げる.また,様々な応用分野で現れる問題に対して開発手法を適用し,解法の有効性の検証,及び応用分野からのフィードバックによる解法の改良を行っていく.
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