2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22700270
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
足立 幾磨 京都大学, 霊長類研究所, 特定助教 (80543214)
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Keywords | 感覚統合的概念 / 社会的対象認知 / 社会的概念 / 比較認知科学 |
Research Abstract |
霊長類の様々な認知能力は、社会生活を営む上で発生する諸問題に対処するために進化してきたとする「社会脳仮説」は広く受け入れられている。この観点より、ヒトとヒト以外の動物の社会的認知能力を比較しその異同を明らかにすることは、ヒトの認知能力の進化的基盤を探る上で最も重要な作業の一つである。本研究では、動物が自身を取り巻く社会環境をどのように概念化し認識しているのかを明らかにしていく。その際、各認知能力単体ではなく、そのネットワークとしての社会的認知能力の全体像を浮き彫りにすることをめざす。すなわち、動物の社会的認知能力を多角的に分析することで、ヒトの持つ社会的認知能力との移動をより鮮明に描き出し、その進化的基盤を明らかにしていく。 本年度はチンパンジーを対象に、彼らが複数感覚様相からの情報を統合した他個体概念(感覚統合的他個体概念)を持つか、を分析する実験を行っている。現在、遅延象徴見本合わせ課題を用いて、写真に映った5頭の既知個体を弁別することを被験体に訓練している。学習が形成された後にはテストへと移る。テストでは、見本刺激が消えた後、選択刺激が現れるまでの間に、見本刺激として呈示された個体の音声(一致条件)・或いはその他の個体の音声(不一致条件)、または同じ時間の無音(統制条件)が挟み込まれる。もし被験体が、既知他個体について感覚統合的概念を持つのであれば、一致条件では成績の向上、不一致条件では、干渉により成績の低下が見られると考えられる。現在、弁別学習は成立しており、遅延時間の調整をおこなっている。23年度早々にはテストに移れると期待される。また、こうした実験に並行して、今後の実験に必要な刺激の採集および作成をおこなっている。
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