2011 Fiscal Year Annual Research Report
発生期における神経細胞の核移動を支配する分子基盤の解析
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22700337
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
梅嶋 宏樹 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 研究員 (40525375)
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Keywords | 脳・神経 / 発生・分化 / 細胞・組織 |
Research Abstract |
神経細胞の細胞核が適切な位置に移動することは機能的な脳の形成において必須である。本研究は神経細胞の細胞核移動における細胞骨格ゐ役割を明らかにすることを目的とし、(1)細胞骨格の動態および(2)細胞骨格と細胞核の相互作用に注目して解析を行なう。本年度に実施した研究の成果について上記の2点に分けて述べる。 (1)-1 Oregongreen488-Taxolによって微小管骨格を蛍光標識しその動態をライブイメージングすることで、核周辺の微小管骨格が細胞核移動とともに前方に移動していることを示唆する結果を得た。この結果をさらに検証するため、光変換型蛍光タンパク質mEOS2と微小管結合蛋白質の融合分子を移動中の小脳穎粒細胞に発現させ、レーザーの局所照射により微小管の一部を標識しその動態を観察した。この実験においてもやはり標識分子が細胞核の移動とともに前方に移動する様子が観察できた。 (1)-2超解像顕微鏡技術の一種である3D-Structured illumination microscopyを用いて微小管骨格構造の観察を行ない、以前報告した"移動中の小脳穎粒細胞において微小管は中心体に収束していない"という主張を支持する結果を得た。 (1)-3細胞骨格の動態を制御することが知られているシグナル分子であるCDK5の阻害が小脳穎粒細胞の移動に及ぼす影響について詳細に解析しその結果をまとめた報告を現在投稿中である。 (2)核膜に局在する分子であるSUN1/2のノックダウンが小脳スライス培養下において移動時の細胞核の形態に影響を与えることを見出した。また、SUN1/2ノックダウンによる移動障害効果がin vitro培養系である小脳再凝集培養系においても再現できることを確認した。 本研究の成果は神経細胞の配置に異常を伴う神経疾患の発症機構の解明や治療法の確立に寄与すると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞骨格動態のライブイメージングに関しては本年度までに微小管およびアクチン骨格の動態観察に成功しており、微小管骨格動態に関しては新たな知見が得られている。 また、細胞核移動に関与する核膜分子としてSUN1/2を同定し、ノックダウンによる細胞移動の障害効果がin vivoだけでなくin vitro培養系においても再現できることを確認した。次年度以降はSUN1/2がどのように細胞核移動を制御しているのか、細胞骨格とどのように相互作用しているのかを上記の系を用いて明らかにすることが課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までに確立した細胞骨格イメージング手法を用いてさらに詳細な細胞骨格動態の観察を行なう。また局所的な細胞骨格破壊や遺伝子ノックダウン法を用いて細胞骨格動態を撹乱し細胞骨格および細胞核移動への影響を検討する。 SUN1/2の抑制による細胞移動障害の作用機序について検討する。SUN1/2抑制下における細胞骨格および核膜局在分子の動態を調べる。また、細胞核の形態変化から細胞核上における応力分布の推定を試みる。 上記の解析において、3D-structured illumination microscopy (3D-SIM)やtotal internal reflection microscopy (TIRF)等の顕微鏡技術を必要に応じて用いる。
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Research Products
(1 results)