2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22700370
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
田中 大介 慶應義塾大学, 医学部, 特任助教 (90456921)
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Keywords | 大脳新皮質 / 系統発生 / 進化 / 神経細胞移動 / マーモセット |
Research Abstract |
本研究の最終目標は「大脳新皮質GABA細胞の哺乳類特有の移動経路を実現するためのメカニズムが、系統発生的にいつ、どのように確立されたのか」を明らかにすることであった。その第一歩として、本研究では細胞レベルでのメカニズムの解明に焦点を絞り、異種間での細胞移植というアプローチにより、大脳新皮質GABA細胞の哺乳類特有の移動経路の出現が、哺乳類特有の「移動環境」に起因しているのか、それとも哺乳類特有の「移動するGARA細胞自身の性質」に起因しているのかを明らかにすることを試みた。前年度の結果、マウスの脳に移植したニワトリおよびスッポンのGABA細胞は、マウス細胞と同様にマウス大脳新皮質へと脳室下帯を通って進入する一方、そこから脳表面方向への方向転換して「大脳新皮質」に進入することができず、脳室下帯に溜まってしまうことが分かった。しかしこれまでの実験結果のみでは、ニワトリ細胞やスッポン細胞が大脳新皮質に進入できないのは単純に異種であるからという可能性が否定できなかった。この可能性を検討するために、今年度は、マウスとは明らかに異種であるが同じ哺乳類であるマーモセットのGABA細胞をマウスの脳に移植した。結果、マーモセット細胞は異種にも関わらずマウス細胞と同様に「大脳新皮質」に進入した。これらの結果は、大脳新皮質GABA細胞の哺乳類特有の移動経路の出現は、哺乳類特有の「移動するGABA細胞自身の性質」に起因していることを強く支持している。前年度の結果と合わせて考えると、これらの結果より、私たち哺乳類の祖先では、抑制性神経細胞が「大脳新皮質」にたどりつくことができるように進化した、と結論できる。
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