2011 Fiscal Year Annual Research Report
非侵襲脳刺激法による運動学習の促進とその神経リハビリテーションへの応用
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22700442
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
田中 悟志 生理学研究所, 大脳皮質機能研究系, 特任助教 (10545867)
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Keywords | 脳機能操作 / 非侵襲脳機能計測 / 学習 / 記憶 / 脳卒中 / リハビリテーション / 電気刺激 / 脳刺激 |
Research Abstract |
頭蓋の外に置いた電極から電気刺激を行う非侵襲脳刺激法は、安全にヒトの脳活動を制御する方法として、神経障害に伴う脳機能低下の回復などへの応用に期待が高まりつつある。特に経頭蓋直流電気刺激(tDCS)は、刺激の極性によって脳機能の「促進・増強」が可能である点で注目を浴びている。本研究では、運動学習による記憶形成のプロセスをtDCSにより増強させる「学習促進効果」に注目し、より長期的な運動機能の獲得を制御する方法を開発し、神経リハビリテーションへ応用することを目的とした。 昨年度は下肢運動機能に障害を持つ慢性期皮質下梗塞患者に対して、下肢筋力トレーニング中における損傷半球側の下肢一次運動野へtDCSを実施し、下肢運動機能への促進効果を検討した。その結果、8名中7名の下肢筋力を一時的に促進することができた。本年度は、刺激から一週間後も促進効果が持続するかを検討した。統計的な有意差には届かなかったものの、刺激から一週間後も促進効果が持続する傾向が認められた。このことは、tDCSがトレーニングにより形成される運動記憶の定着に促進効果を持うことを示唆している。今後被験者数を増やすことで、促進効果の有無を明らかにしていきたい。 また機能的磁気共鳴画像装置(functional MRI)を用いた実験により、大脳皮質運動野へ直流刺激を与えると、刺激された大脳皮質に加えて皮質下の脳活動も上昇するという予備的な知見を得た。このことは、大脳皮質への直流刺激が解剖学的な結合を介して皮質下の神経活動にも影響を与えていることを示唆しており、tDCSの作用機序の理解に役立つ知見と考えられる。
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Research Products
(6 results)