2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22700484
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
山本 衛 近畿大学, 生物理工学部, 准教授 (00309270)
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Keywords | バイオメカニクス / 骨 / 腱 / 損傷 / コラーゲン線維 |
Research Abstract |
腱は,骨と筋を結合する位置に存在しており,関節の可動にとって不可欠な組織である.骨格の動きを制御する筋は,骨に付着する必要があるものの,軟組織である筋のままでは硬組織である骨と堅固に結合することは不可能である.そこで,筋と骨の間を仲介する役割を腱が担っている.このために,腱は伸縮性の低い結合組織のみで構成されており,硬い骨と極めて巧妙に連結している.しかし,過度の力学的負荷が作用した場合には,腱もしくは腱付着部に損傷が発生する.腱組織は,コラーゲン線維を主成分として含んでおり,この線維の変化の影響を含めて,骨や腱ならびにそれらの付着部位における損傷は,発生要因や損傷形態が多様であることから,損傷メカニズムの解明はもとより現象の把握も十分に行われていないのが現状である.そこで本研究では,骨・腱付着部の構造-機能関係を定量化するための基礎データとして,コラーゲン線維を酵素処理によって減少させた組織の力学的特性を調べるとともに,無負荷下における培養腱の形態変化について検討した.成熟家兎より摘出した膝蓋骨-膝蓋腱-脛骨複合体を実験に使用した.正常の腱である比較対照群の破断ひずみと比較して,コラゲナーゼ処理によってコラーゲン成分を減少させた場合では,組織の破断ひずみが比較対照群よりも著しく高値となる傾向がみられるとともに,骨との結合部付近での変形が大きくなる様子が観察された。また,培養腱の実験では付着部に比べて腱実質部の方が線維芽細胞の増殖が顕著である傾向がみられた.これらの結果より,腱実質部と付着部では,構成成分の変化による影響や細胞の活性度が異なっていることが示唆された.今後より詳細な微視的および細胞生物学的検討を行うことによって,腱付着部損傷後の適切なリハビリテーション手法の実施など,骨や腱の臨床分野における診断治療法の発展への貢献ができるものと推測される.
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