2010 Fiscal Year Annual Research Report
一次運動野の興奮性の変化をもたらすトレーニング要因
Project/Area Number |
22700590
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
門田 宏 東京大学, 大学院・教育学研究科, 特任研究員 (00415366)
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Keywords | 運動学習 / 一次運動野 / 経頭蓋磁気刺激 |
Research Abstract |
トレーニングに伴って生じる脳神経回路の再構築は、我々ヒトが新たな運動スキルを柔軟に獲得するための神経基盤である。本研究では、一次運動野に焦点を当て、この領域の神経系再構築のメカニズムを明らかにしていく。 これまでサルのニューロンを記録した先行研究から、運動中の一次運動野のニューロンは運動する方向に応じて発火パターンが変わり、発火しやすい方向(至適方向)が存在することが知られている。そしてその至適方向はトレーニングに伴って変化する事が明らかになっており、新たな運動スキルを獲得するための神経基盤であると考えられている。しかし、運動の準備段階におけるヒトの一次運動野が至適方向性を持ち、トレーニングに伴って変化するかどうか明らかになっていない。本研究では経頭蓋磁気刺激によって誘発される運動誘発電位(MEP)を調べることにより、運動を実行する前の一次運動野の興奮性がトレーニングの前後でどのように再構築されるのかを検討した。 被験者はロボットアームを操作する事によりディスプレイに表示されたカーソルをターゲットに向かって動かす。この時、速度依存性の力場が発生するという状況を作り出し、この新しい環境下で運動学習を行った。トレーニングの前後でMEPの変化を調べたところ、MEPは筋の機能的特性に応じた至適方向が存在し、その至適方向はトレーニングによって変化する事が明らかになった。この結果から新たな運動スキルの獲得に関連するヒトの一次運動野は運動準備段階から活動し、短期的なトレーニングによって変化する事が明らかになった。この一次運動野の柔軟な変化は状況に応じて適切な運動を実行することに寄与しているメカニズムであると考えられる。本研究の成果はヒトが新たな運動スキルを身につける時の神経回路の再構築過程を解明する有用なツールとなり、運動学習の基礎理論に貢献できるものである。
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