2010 Fiscal Year Annual Research Report
15年戦争下における集団体操の奨励と国民身体の統制
Project/Area Number |
22700635
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
佐々木 浩雄 龍谷大学, 文学部, 講師 (80434348)
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Keywords | 体操 / 国民体育 / 15年戦争 |
Research Abstract |
本研究の目的は、15年戦争下に奨励された集団体操について、(1)戦時へ向かう中で考案・実施された種々の体操の実態把握、(2)各種団体、工場、農村などにおける普及の実相、(3)体操を指導した人々や文化人・知識人の言説編成の分析を通じで、国民の体力向上や身体の規律化が、なぜ体操で、どのように行われようとしたかについて検討することである。 本研究は、30年代以降の国民体育奨励をめぐる識者の議論をふまえて、これまでの研究では十分にその歴史的位置づけを検討されてこなかったこれらの体操がどのような経緯で生み出されたのかを明らかにするものであり、22年度は上記(1)の作業のための資料収集をほぼ完了した。上記(2)については日中戦争勃発以降、国民体育の一つのモデルとして位置付く労働者の体操が、20年代末から産業衛生施策として取り組まれ始めた経緯について明らかにすることができた。その成果は23年5月の学会で発表し、速やかに論文化する予定である。 22年度は、学会および雑誌において研究成果を公表することができなかったが、イギリスのDe Montfort大学主催の日英学術交流シンポジウム(Japanese Reflections on the History of Sport)で"Changes in Body and Health Values along with Modernization of Japan"と題して、明治以来の近代化・西洋化における医療体制の転換や体操の導入が日本人の身体観にもたらした影響や、その反動としての1910~20年代における脱西洋化を指向した動きについて口頭発表したことを付記しておく。これは、近代日本における体操実施の状況や体操の日本化という30年代状況の萌芽的状況を説明するものでもある。公式の学会ではないものの、イギリス・スポーツ史の第一線の研究者と日本の「近代」と「身体」について議論をする貴重な場となった。 研究成果の公表に際しては、23年度中に著書(単著)として刊行することを予定している。23年度は複数の学会発表および雑誌論文等とあわせて研究成果の公表に精力的に取り組む所存である。
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