2011 Fiscal Year Annual Research Report
15年戦争下における集団体操の奨励と国民身体の統制
Project/Area Number |
22700635
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
佐々木 浩雄 龍谷大学, 文学部, 講師 (80434348)
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Keywords | 体操 / 国民体育 / 15年戦争 |
Research Abstract |
本研究の目的は、15年戦争下に奨励された集団体操について、以下の諸点を明らかにし、国民の体力向上や身体の規律化が、なぜ体操で、どのように行われようとしたかについて検討することであった。 (1)戦時へ向かう中で実施された種々の体操の実態把握 (2)各種団体、工場、農村などにおける普及の実相 (3)体操を指導した人々や文化人・知識人の言説編成 23年度には以下のように研究成果の公表をおこなった。 (1)研究発表「昭和初期の工場体操について」(日本体育学会体育史専門分科会、2011年5月) (2)論文(「昭和初期の工場体操普及について:産業衛生協議会答申と内務省社会局の取り組み」『龍谷紀要』33(1)、2011年9月、121-137) (3)研究発表「『体操の時代』:十五年戦争下の国民体育と集団体操」(早稲田大学東伏見スポーツサイエンス研究会、2012年1月) (4)著書(共著)「太平洋戦争下の国民体育と体操:東京帝国大学における鍛錬部の設置と『全学鍛錬体操』の実施」楠戸一彦先生退職記念論集刊行会編『体育・スポーツ史の世界:大地と人と歴史との対話』2012年2月、205-224 (1)および(2)では1930年代に国民体育として成長を遂げる工場労働者の体操に着目し、内務省社会局および関係団体の動向を中心とした工場体操普及の施策化の過程を明らかにした。(3)では1930年前後から様々な体操が考案・普及される過程を国民体育の台頭と競技スポーツの後退という状況と合わせて説明した。(4)では1942年の大日本体育会設立前後から本格化する国民修錬、さらには学徒出陣に向けた高等教育機関における鍛錬体操実施の様子を競技スポーツの位置づけの変化にも着目して描き出した。 15年戦争期の国民身体の統制に着目した従来の研究では、ラジオ体操が象徴的なものとして取り上げられてきたが、実際には文部省、内務省、厚生省のほか、関係諸団体が1930年前後から様々な体操を創案・普及し、日中戦争前後からはメディアも巻き込んで「体操の時代」を作り出していたことを明らかにすることができた。 上記を含めた本研究課題の成果を公表すべく23年度中に著書の刊行を目指していたが、24年度にずれ込むこととなった。
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Research Products
(3 results)