2011 Fiscal Year Annual Research Report
妊娠期のトランス脂肪酸摂取が児の発育・発達に及ぼす影響
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22700774
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Research Institution | Mukogawa Women's University Junior College Division |
Principal Investigator |
山本 周美 武庫川女子大学短期大学部, 食生活学科, 講師 (60441234)
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Keywords | トランス脂肪酸 / 母子栄養 / 子宮内発育遅延 / 低出生体重児 / 胎盤 / 発達障害 / 脂質代謝 / 早産 |
Research Abstract |
昨年度は、母体血中のトランス脂肪酸(以下TFA)は胎盤を通過して胎児側へ移行すること、胎盤組織中のTFA量は児の発育指標と負に相関することを報告した。一方、TFAを多く摂取する母親は脂質の摂取量自体が多い傾向があり、他の脂肪酸の影響についても明らかにする必要があると考えられた。そこで、本年度はTFA以外の脂肪酸が児の発育に及ぼす影響について検討した。更に、対象を正期産児から早産児に広げ、発育との関連について検討した。 大阪府立母子保健総合医療センターに入院し、文書により同意を得た、正常妊娠経過で正期産の母子16組、および早産の母子27組から母体血、臍帯血、胎盤組織(絨毛膜側)を採取した。脂質抽出、誘導体化処理後、GC/MSに供しC18:1-9c(オレイン酸)、C18:1-t(TFA)を定量し、さらにオレイン酸量に対するTFA量の比(以下t/c比)を算出し、一部の検体については、16種の脂肪酸定量分析を行った。児の発育指標と母児に関するその他の情報はカルテより入手した。 胎盤中の脂肪酸量およびt/c比と児の発育指標との関連性を、児の性別、非妊娠時BMI、在胎週数、喫煙の有無で補正し検討したところ、正期産児ではTFA量、およびt/c比と発育指標に有意な負の相関が認められた(p<.05)。早産児においては、t/c比と出生体重SDスコアとの間に有意な負の相関関係を認めた(p<.05)。しかし、オレイン酸およびその他16種の脂肪酸については、正期産児、早産児ともに発育指標との間に有意な相関は見出せなかった。このことから、正期産児、早産児ともにt/c比と児の発育指標は有意な負の相関があり、胎盤組織中のTFA存在比率が高い児は発育が抑制される可能性があることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、日本人妊婦におけるトランス脂肪酸摂取(以下、TFA;Trans Fatty Acid)が児の発育・発達に及ぼす影響を明らかにし、摂取影響のエビデンスを確立することである。本年度は児の発育に及ぼす影響について検討し、正期産児、早産児ともに胎盤組織中のTFA存在比率が高い児は発育が抑制される可能性があることを見出した。発達に及ぼす影響については現在カルテより発達指標に関連する情報を収集中で、解析が進行中であり、計画通りに進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はTFA摂取が児の発達に及ぼす影響について明らかにするため、発達指標とこれまでに測定した胎盤組織中のTFA量との関連性について検討する予定である。この発育との関連性はすでに解析が終了した発育データと総括し、妊娠期におけるTFA摂取のリスクの適正評価につなげ、研究成果を広く社会の利益として還元したい。
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Research Products
(4 results)