2011 Fiscal Year Annual Research Report
南海トラフ沿いで発生する津波の即時予測技術の高度化
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22710175
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
松本 浩幸 独立行政法人海洋研究開発機構, 地震津波・防災研究プロジェクト, 技術研究副主任 (80360759)
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Keywords | 津波 / 地震 / 地震・津波観測監視システム / 水晶水圧計 / ドリフト / 東北地方太平洋沖地震 |
Research Abstract |
東南海地震の想定震源域の地震と津波の観測監視強化のために、海底に地震計と津波計等から構成される「地震・津波観測監視システム」が熊野灘に設置された。合計20観測点を海底ケーブルでつなぐ海底ネットワークの全データの配信が2011年8月より開始されている。本年度は、海底ネットワークのうち主に津波観測を目的として設置された水晶水圧計について、海底設置前に実施された室内実験による長期安定性(ドリフト)評価、ならびに海底設置後に発生した2011年東北地方太平洋沖地震の津波について海底ネットワークの水圧計データの解析を実施した。 熊野灘の海底ネットワークに採用される水晶水圧計について、室内実験による予測結果によれば、ドリフト量は最大20hPa/月程度を示した。そして海底設置後もドリフトは継続していることを確認した。また震源から約800km離れた熊野灘の海底ネットワークの水圧計でも東北地方太平洋沖地震の津波を観測した。海底ネットワークの観測点では15時50分ごろに津波が到達して、約20分後に30cm程度の最大波高を示した。その後、津波は波高を増大させながら紀伊半島沿岸に到達していく状況を、近傍のGPS波浪計と検潮所の潮位データは如実に記録している。これは既存の津波観測点に加えて、沖合に新たに展開された海底ネットワークが津波の早期検知に寄与することを実証したものである。東北地方太平洋沖地震による津波は、沖合津波観測としてはこれまでの観測値の最大の周期と振幅であることが判明した。 さらにこれまで津波発生時には、水圧変動の周波数帯域が低周波から高周波へ移行するにつれて、静水圧、動水圧、水中音圧の3種類の水圧が順次観測されることを津波シミュレーションで指摘してきたが、今回初めて東北地方太平洋沖地震の地震計と水圧計の観測データから実現象として確認されることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2011年3月の東北地方太平洋沖地震の発生時には、海洋研究開発機構が運用する海底ネットワークシステムにより比較的震源近傍で、地動データと津波を含む水圧データが同時に取得できた。本年度は、津波シミュレーションに加えて、海溝型巨大地震発生時の実データ解析を実施できたことで、実務レベルでボトルネックとなっている津波発生時の水圧計データに含まれる津波以外の成分を分離するフィルター設計への道筋を見出した。このような理由により、上記評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
2011年東日本大震災は、わが国の津波警報の発表方法を見直すきっかけとなった。その一環で2012年3月より気象庁は、沖合の水圧式津波計の観測データを津波警報へ活用することを開始した。しかしながら、海底に設置した水圧式津波計には津波による水圧変動以外にも、依然として地震動による擾乱、津波波源近傍では海底と海面間を共振する音響波などが含まれている。水圧式津波計データ活用の最初の事例となった(1)2012年3月14日に三陸沖で発生した地震(M7.0)ならびに(2)2011年東北地方太平洋沖地震(M9.0)の水圧式津波計データを海底地震計データとともに精査して、水圧式津波計を利用する津波予測の精度向上と適正化に資する知見の蓄積を推進する。
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Research Products
(6 results)