2011 Fiscal Year Annual Research Report
乱流による時空間変動を考慮した数値モデルによる複雑地形上での吹雪災害の危険度評価
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22710179
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Research Institution | National Research Institute for Earth Science and Disaster Prevention |
Principal Investigator |
根本 征樹 独立行政法人防災科学技術研究所, 観測・予測研究領域・雪氷防災研究センター・新庄支所, 主任研究員 (30425516)
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Keywords | 雪氷学 / 吹雪 / 乱流 / LES / 数値流体力学 |
Research Abstract |
乱流現象の非定常計算に優れるラージ・エディ・シミュレーション(LES)を用い、吹雪の時間・空間変動特性を表現可能な数値モデルを開発するとともに、風洞実験や野外観測の結果とあわせて、吹雪の変動特性を明らかにする。 一様水平な積雪面上を仮定した吹雪のLESにより得られた吹雪・風速の変動データについてFFT(高速フーリエ変換)による周波数解析を行なった。水平風速、鉛直風速、吹雪質量フラックスの変動の無次元パワースペクトルにより、吹雪浮遊層における質量フラックスの変動のエネルギーは、特に高周波領域において風速成分より大きいことが分かった。また、水平風、鉛直風のそれぞれと吹雪質量フラックスとの間のコヒーレンス(相関性)を調べた結果から、時間スケールで20秒以上の水平風速変動と吹雪質量フラックス変動との間に相関があることが分かった。なお鉛直風と吹雪質量フラックスとに関しては、全体的にコヒーレンスの値は小さく、両者の相関がほとんどない。ただし水平風、鉛直風いずれの場合も、変動周波数が0.1Hz程度の領域でコヒーレンスが目立って増加し、10秒程度の時間スケールの吹雪変動に対する水平・鉛直風の変動の影響の寄与が示唆された。 また、モデル検証のため、低温風洞装置を用いた吹雪実験において、時間応答特性に優れた測器を用いた測定を実施するとともに、過去に取得された野外観測データの一部を再解析した。これらのデータについてFFT解析し、無次元化した上でモデル結果も含めて相互比較した結果、コヒーレンスの分布形状はピークの発現位置など良く一致した。これは浮遊状態(z>0.1m)にある吹雪の変動特性について相似則が成り立つことを示唆する。 さらに吹雪のLESモデルに各種キャノピーモデルを組み込み、防雪柵、防雪林の効果を考慮した解析が可能となる様、改良した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
吹雪のLESモデルについては、複数の乱流モデルを用いた計算が可能であるほか、防雪柵や防雪林の効果を表現するキャノピーモデルも組み込まれ、汎用性が高められている。また実験・観測により得られた吹雪の変動特性については、LESモデルにおいても再現され、本モデルの検証が進むとともに、実在地形等を対象とした計算を実施する段階に至った。以上より、(2)おおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
吹雪のLESモデルを実在地形上に拡張し、吹雪発生頻度が高い地域を対象とした計算を主に実施する。これにより、対象地域における視程障害、吹きだまり災害危険度を示すハザードマップの試作が可能となり、吹雪による災害の危険度(ポテンシャル)評価など、吹雪防災対策に直接的に資する成果が期待できる。 また、本研究の成果は実在地形上における吹雪危険度のリアルタイム予測などに応用可能であるなど、その波及効果は大きい。このことを踏まえ、WRFなど現在広く用いられているメソ気象モデルの導入とLESモデルとの結合およびこれらを利用した吹雪予測手法の確立についても検討する。
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Research Products
(3 results)