2010 Fiscal Year Annual Research Report
新しいタイプの免疫抑制剤ブラシリカルジンの全合成研究と機能解析
Project/Area Number |
22710206
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
吉村 文彦 北海道大学, 大学院・理学研究院, 助教 (70374189)
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Keywords | ブラシリカルジンA / 共役付加反応 / 環化反応 / 四級不斉炭素 / 有機銅試薬 / パーヒドロフェナントレン / 免疫抑制剤 / S_N2'反応 |
Research Abstract |
新しいタイプの免疫抑制剤として期待されるハイブリット型天然物ブラシリカルジンAの斬新かつ効率的全合成方法論の開拓を目的に本研究を遂行した。本年度は以下二つの重要な研究成果が得られた。 1)環上四級不斉炭素の高選択的構築法の開発:ブラシリカルジンAをはじめとする生理活性天然物や医薬品には、炭素環上に四級不斉炭素を有するものが多く存在し、その構築法の開発は合成化学上重要な課題の一つである。今回、同一基質から出発して、環上四級不斉炭素の立体配置が互いに異なる2種類の置換体を作り分けられる効率的な新手法を開発した。すなわち、β-エトキシ-α,β-不飽和環状ケトンと容易に不斉合成可能なエポキシアルデヒドからアルドール反応を経て合成されるγ,δ-エポキシ-α,β-不飽和環状エノンに対してジアルキル亜鉛-シアン化銅反応剤を作用させると、S_N2'反応が進行し、アンチ体ケトアルコールが高立体選択的に得られた。一方、エノンに塩化マグネシウムを作用させてクロロヒドリンに変換後、同様のS_N2'反応を行うと、先の化合物のジアステレオマーに相当するシン体ケトアルコールを選択的に合成することができた。本手法は基質およびアルキル化剤に対して広い汎用性を示した。 2)アンチ-シン-アンチ縮環パーヒドロフェナントレン骨格構築法の開発:ブラシリカルジンAの全合成上の最重要課題であるB環部が歪んだ舟形構造をとる本骨格の構築を、二度の分子内共役付加反応を鍵反応に用いる独自の手法で達成した。すなわち、A環部を有する環化前駆体に対して、α-シナノカルバニオンの分子内共役付加反応を行い、二つの四級不斉炭素を有するB環部を立体選択的に構築した。側鎖を伸長後、1,1-ジブロモアルケンから(Z)-ビニル銅を調整後、ワンポットで分子内共役付加反応を行うことでC環を形成し、アンチ-シン-アンチ縮環パーヒドロフェナントレン骨格を立体選択的に構築することができた。
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