2010 Fiscal Year Annual Research Report
外来種による繁殖干渉がもたらす在来雑草の進化:種子散布共生と生育環境の変化
Project/Area Number |
22710240
|
Research Institution | Osaka City Institute of Public Health and Environmental Sciences |
Principal Investigator |
高倉 耕一 大阪市立環境科学研究所, 研究主任 (50332440)
|
Keywords | 繁殖干渉 / 外来種 / 生物多様性 / 種子散布 / イヌノフグリ / アリ散布種子 / 植物DNA抽出 |
Research Abstract |
本研究では、絶滅が危惧される草本植物イヌノフグリについて、外来種が侵入した本土地域で生育環境が石垣特異的に変わったことの要因と影響を明らかにすることを目的とした。平成22年度の研究では、アリ類、およびアリを呼び寄せる効果を持つアブラムシ類との関係に注目した。イヌノフグリが世代を通じて石垣環境にとどまって、近縁外来種による繁殖干渉(種間送粉による種子形成阻害作用)を避ける上で、種子散布者であるアリは重要な役割を持つと考えられる。また、アブラムシ類は、甘露を分泌することで、そのアリ類をイヌノフグリ上に呼び寄せる。京都市および奈良市における個体群について、アブラムシ食害頻度を調べたところ、多くのイヌノフグリにアブラムシ類が定着しており、そのアブラムシにトビイロケアリなど種子散布を行うアリが随伴していることが明らかになった。このことから、本来は植物にとってコストであるアブラムシの食害が、石垣環境に生育し外来種による影響を避ける上で有利に働いている可能性がある。このことは、近縁外来種による在来種の影響は、ただ単にその種間の関係のみならず、種子散布者や植食者との関係にも影響することを示唆するものである。また、石垣環境特異的に生育する形質がどのような進化的な過程で獲得されたかを明らかにするため、分子生物学的な分析手法を用いる予定である。22年度はその予備段階として、イヌノフグリ類からのDNA抽出・精製の手法を確立した。また、その過程で、多様な植物種に適用可能で、かつ簡便・安価・安全な植物DNAの抽出法を開発した。この技術は本研究の推進だけでなく、植物学全体にも寄与しうるものである。
|
Research Products
(6 results)