2011 Fiscal Year Annual Research Report
外来種による繁殖干渉がもたらす在来雑草の進化:種子散布共生と生育環境の変化
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22710240
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Research Institution | Osaka City Institute of Public Health and Environmental Sciences |
Principal Investigator |
高倉 耕一 大阪市立環境科学研究所, 研究主任 (50332440)
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Keywords | アリ散布種子 / イヌノフグリ / アブラムシ / 絶滅危惧種 / 在来種保全 / 外来種 / STE/CTAB法 / ISSRマーカー |
Research Abstract |
絶滅が危惧される在来草本イヌノフグリについて、その種子奇散布しているアリ種の構成を調査した。平成23年度は、近縁な外来種オオイヌノフグリが侵入している本土地域で調査を行い、特定の種に限定されない広範なアリ種によって種子が散布されていることを明らかにした。具体的には、オオズアリ、トビイロシワアリ、トビイロケアリ、シリアゲアリ類などである。その多くはイヌノフグリに寄生しているワタアブラムシに随伴していた種であった。このことから、本来はイヌノフグリを吸汁し害を及ぼす存在であるアブラムシ類が、種子散布者であるアリを呼び寄せ、結果的に種子散布を促進していることが示唆された。また、石垣特異的に分布する本土地域のイヌノフグリ個体群では、いまだ外来種が侵入しておらず地面に生育する島嶼地域のイヌノフグリ個体群に比較して、アブラムシの寄生頻度が高い傾向があった。このことは、アブラムシが結果的にイヌノフグリ種子のアリによる散布を促進していることを示唆していた。 イヌノフグリ個体群間の遺伝的構造を調べるために、イヌノフグリに適したDNA抽出法および遺伝マーカーの検討を行った。市販の植物DNA抽出キットでは十分な純度・量のDNA溶液を得ることができなかったが、STE(スクロース・Tris・EDTA)/CTAB法およびその変法であるSTE/GFF(ガラス繊維濾紙)法によりPCRに利用可能なDNA溶液を得られることが明らかになった。葉緑体DNA上の複数領域の塩基配列を解析したところ個体群間の変異は全く見いだされなかったが、ISSR(単純繰り返し配列間)マーカーが利用可能であることを明らかにし、適切なマーカー群を特定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
石垣環境特異的に生育する本州本土地域のイヌノフグリ個体群について、その種子散布者を明らかにすることができた。また、植食者であるアブラムシがアリによる種子散布に貢献している可能性を示唆するデータを、野外調査より得た。さらに、分子遺伝学的な方法に基づいてイヌノフグリ個体群間の構造を明らかにするために必要な方法論(DNA抽出法、解析法)を確立することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
イヌノフグリの祖先的な生活系を残すと考えられる島嶼地域個体群において、種子散布者を特定するための野外調査を実施する。すでに実施した本州本土地域での調査から、石垣特異的に生育する個体群ではアブラムシに随伴する多様なアリ種によって種子が散布されていることが明らかになっており、それとの比較を行う。また、分子遺伝学的な手法による個体群間構造の解析を行い、石垣特異的に生育するという生活型のルーツの解明を目指す。
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Research Products
(3 results)