2010 Fiscal Year Annual Research Report
アフリカにおける低強度紛争の動態理解と平和構築に関する人類学的研究
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22710253
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
波佐間 逸博 長崎大学, 国際連携研究戦略本部, 助教 (20547997)
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Keywords | カラモジャ / 武装解除政策 / 企図の変形 / 長期化した紛争状況 / 東アフリカ牧畜民 / カリモジョン / ドドス / 自動ライフル銃 |
Research Abstract |
2010年8月から9月にかけてウガンダ共和国カラモジャにおいて参与観察を実施し、国家および非国家主体に焦点をあて、低強度紛争の動態理解に関連した資料収集をおこない、長期化した紛争状況を生きる人びとの目線から、外部社会による軍事介入と新規の窮状およびそれへの対応という局面を含みつつ変容する武装社会の実相を明らかにした、ウガンダ中央政府がいわゆる「違法銃」を対象に2001年からはじめた平和強制的な武装解除が持続的に実施されたことによって、北東部牧畜民居住地(カラモジャ)内での自動ライフル銃が公然と所持・使用される機会はたしかに減少し、枠内の駐留軍は現在、規模縮小を進めるに至っている。だが、今日までの外部社会による介入政策への地域社会のリアクションは、同一民族内においてさえ一様ではなかった。具体的には、銃所持者間で秘密裏に結成した若者集団が徹底的に武装抗戦をしたり、あるいは地元牧畜民でなければアクセスが困難な山岳地へ火器とともに逃亡することによって武器放棄を拒否する一方で、政府・非政府系開発援助団体が組織する平和・武装解除キャンペーンへの自発的な参与と政府への武器「返却」といった積極的受容に至るまでの幅を示していたのである。この結果は重要な社会的含意を帯びる。政府介入によってもたらされた集団間武装格差がカラモジャ内部からのみならず、スーダン・ケニア側牧畜社会といった外部からも、非武装化された集団を狙った新たな家畜略奪を招来するとともに、被害者集落を包含する定住的セツルメント・クラスターが無人化するほどの大量の転地者を生じさせたからである。今年度実施した現地調査では、このような低強度紛争社会における武装解除後の生存が根底から揺るがされる新たな危機が兆しはじめていることが明らかになるとともに、牧民たちが本来はきわめて遊動的であった放牧野営地を、カラモジャに構築された陸軍駐屯地に隣接させて構築・固定し、襲撃の高リスクな夜間に国軍兵士を家畜ガードとしで活用する苦肉の実践を創出していることがわかった。さらに北部カラモジャでは陸軍兵士のパトロールに随行する地元牧民がローカルな取り決めのもと、軍から与えられた自動小銃を手にしつつ、自らの牛群放牧の警護に使用していた。平和構築や地域の非武装化を推進する外部介入主体の企図は、日常化した紛争状況を生きる社会との関与文脈において変形されているのである。
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Research Products
(6 results)