2011 Fiscal Year Annual Research Report
ソ連崩壊後におけるロシアの教育と宗教~宗教文化教育が果たす機能
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22720030
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Research Institution | Seisen University. |
Principal Investigator |
井上 まどか 清泉女子大学, 文学部, 講師 (70468619)
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Keywords | ロシア / 宗教復興 / 倫理 / 教育 / 宗教運動 |
Research Abstract |
これまで、連邦の国立学校において現在試行中の宗教文化教育(科目名「宗教文化と世俗倫理の基礎」)について文献資料をもとに考察をすすめてきた。その考察において課題として浮上してきたのは、(1)宗教文化教育の必要性がどのような文脈で議論され、実施へと至ったのか、という歴史的背景と、(2)次世代を担う青少年の教育において国家が果たす役割と家庭(親)が果たす役割がどのように理解されているのか、という教育の担い手をめぐる問題であった。ともにソ連崩壊後の社会的変化が影響を及ぼしている。本年度は、この2つの課題と向き合い、おもに言説分析を中心とする考察を行なった。 (1)については、1990年代前半のロシア社会における宗教状況の考察が必須であり、当時、ロシアにおいて社会問題化していたオウム真理教の活動について考察を行なった。その成果が論文「ロシアにおけるオウム真理教の活動」である。 (2)については、青少年教育の分野でなにが家庭(親)に期待されているのか、という問いとともに、現代のロシア連邦における女性像および家族像の言説分析を行なった。ここで対象としたのは、諸宗教のなかでもロシア連邦において信徒数の多いロシア正教会である。この課題については、学会での口頭発表の後、論文「現代のロシア正教会における女性像」として研究成果をまとめ、次年度に発行される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題についての文献資料の考察・分析を通じて明らかとなった課題に取り組んでおり、当初、研究目的として掲げた点は解明が進んでいる。当初の研究計画に挙げた現地(ロシア連邦内)調査を行なうことはできなかったものの、米国のジョージ・ワシントン大学ヨーロッパ・ロシア・ユーラシア研究所(IERES)の客員研究員として、3週間にわたり、国外の研究者とともに議論を重ねた。これを通して、比較の視点から本研究課題について考察を深めることができたことは本研究課題の進展につながっている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画では、ロシア連邦内の現地調査を継続的に実施することで研究課題の遂行を予定していた。ただ、文献資料の考察・分析や国外諸地域の研究者との交流を通して、言説分析の重要性および他国との比較的視点のもとにロシア連邦のケースの特殊性を明らかにする必要性を感じている。そのため、今後も言説分析を継続して行なうとともに、比較アプローチについて考察・定式化して現地調査に備える予定である。
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