2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22720033
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
箱田 徹 立命館大学, 衣笠総合研究機構, ポストドクトラルフェロー (40570156)
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Keywords | 思想史 / 哲学 / フーコー / フランス / 20世紀 / 言説 |
Research Abstract |
ミシェル・フーコーの方法論上の課題について、『知の考古学』(1969年)を当時の理論および社会状況との関係で考察した。とくに昨年度からの問題意識を発展させ、フランスの「六八年五月」との関わりを重点的に考察することで、『知の考古学』は実践概念を経由して、政治的主体性の問いを導き出すとの認識を得た。この問いが同書のテーマである、考古学(=アルシーブ研究)の対象としてのアルシーブ概念と交錯するところから、1970年代以降のフーコーの理論的展開が生まれた。つまりフーコーにとって『知の考古学』が持つ方法論上の意義は、言説の一般理論に取り組んだ点にあるのではなく、実践と主体性という問いを浮上させた点にある。もちろんこれらの問いは、1960年代後半以降にフランス内外の社会情勢が緊迫する中で、フーコーに投げかけられた面も大きい。だがその事実とフーコーの理論の関わりについては、一般に考えられているように1970年代以降、本人とその思想があたかも突然「政治化した」と捉えるのではなく、『知の考古学』がすでに政治と主体性に関わる問いを携えていたと考えるべきだ。 フーコーの思想に関しては、考古学、系譜学、倫理という三類型論や、1970年代半ばでの戦争モデルの放棄という理解が存在する。とはいえ1970年前後の文献を参照すれば、問いの移行や段階よりも連続性や再定式化があることははっきり見て取れる。本研究の意義と重要性は、政治的主体性という観点を導入することで、そうした「区分」が見えにくくする、フーコー自身の問いの持続性と展開を明らかにする点にある。また本研究は後期フーコーの問題系全体を貫く統治の問いを、主体性の問いとの関わりで捉える上で重要な視点を提示している。
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Research Products
(4 results)