2012 Fiscal Year Annual Research Report
「反・明治維新」感情の系譜学:同時代から今日に至る思想とメディア
Project/Area Number |
22720035
|
Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
與那覇 潤 愛知県立大学, 日本文化学部, 准教授 (50468237)
|
Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 日本史 / 思想史 / メディア史 / メタヒストリー / グローバルヒストリー / 学際研究 / 明治維新 / 中国化 |
Research Abstract |
研究年度3年目である本年度は、昨年度に刊行した本研究の成果である『中国化する日本 日中「文明の衝突」一千年史』(文藝春秋、2011年11月)の歴史観を、より学界の内外に普及させる活動が目立った。最も巷間にアピールしたのは、同書で描いた「東アジアの中の日本史」の構図を、より広くグローバルヒストリー、および社会科学の観点から吟味した『「日本史」の終わり 変わる世界、変われない日本人』(池田信夫氏との共著、PHP研究所、2012年9月)の刊行であろう。またアカデミズムに向けては、日本思想史学会の会誌『日本思想史学』(44号、2012年9月)に、やはり本研究の観点からの動向レビューを発表したほか、次年度(最終年度)には、それぞれ日本思想史2点、政治学2点の論集に、関連論文を発表できる予定である。 そのほか、昨年度に引き続き各種の講演、対談、メディア出演等を通じた研究成果の公表も多数行ったが、特記すべきは中国研究のフィールドへの成果の発信であろう。日中国交回復40周年に際しての、南山大学アジア・太平洋研究センターシンポジウム「新世代の日中関係論」(2012年10月27日)では明治維新以降の日本の「民主化」の再検討を行い、また日本現代中国学会全国大会の現代思想分科会「『世界システム論』と中国現代思想」(一橋大学、2012年10月21日)では、「資本主義」の概念を日本史・中国史の視野からいかに再定義するかについて、共演者と実りある討論を行うことができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の大きな目的の一つは、もっぱら「西洋化」というベクトルのみで描かれがちであった明治維新以降の日本近代史の語りを刷新し、かつそのことを通じて中国史を中心とする外国史や、より普遍的な社会科学の理論とのあいだに、日本史研究との対話のフィールドを開くことに置かれている。その観点からすると本年度、各界の論者との対談やシンポジウムへの登壇等を通じて、これまでにない組み合わせで近代日本の経験を再点検するコラボレーションを実現できたこと自体が、本プロジェクトの達成として貴重なものになっていると思われる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後も本研究の理論的バックボーンたる「中国化」という観点に基づく新たな日本史像を、各種の場や媒体で発信し続けると同時に、より具体的なテキストに則した読解と分析を、本年度の成果を引き継ぎつつ進めてゆく。戦前の論者である内藤湖南に関しては、論文を脱稿し次年度(最終年度)に刊行のめどが立っているため、今後は戦後の論者における言説に着目し、特に山本七平の史論における「中国化」と「明治維新」との関連を追及してゆくつもりである。より具体的には、本年度に「変えてゆくためのことば 二〇世紀体験としての網野善彦」(網野善彦『歴史を考えるヒント』解説、新潮文庫、2012年8月)として試論的に公表した「日本史認識の転機としての1970年」という問題意識を掘り下げつつ、やはり同時期から積極的な日本史への提言を始める網野、司馬遼太郎らの言説をも意識しながら、山本における「戦争体験」と「明治維新批判」、そして「儒教・東アジア認識」の関連を探求してゆく。
|
Research Products
(6 results)