2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22720046
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Research Institution | Kyoritsu Women's University |
Principal Investigator |
山本 聡美 共立女子大学, 文芸学部, 准教授 (00366999)
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Keywords | 美術史 / 日本中世絵画史 / 絵巻 / 仏教説話画 / 経典 / やまと絵 |
Research Abstract |
1)作品調査:下記3件の絵巻に関する作品調査・撮影を実施した。(1)「法華経絵」1巻(香雪美術館蔵)、(2)「観音経絵」1巻(メトロポリタン美術館蔵)、(3)「北野天神縁起絵巻」5巻(メトロポリタン美術館蔵)。また「法華経絵巻」1巻(京都国立博物館蔵)に関して展観の機会を得た。さらに、(1)(2)の比較対象として掛幅「観音経絵」(本土寺蔵)、(3)の比較対象として掛幅「六道絵」(聖衆来迎寺蔵)に関する展観の機会を得た。 2)画像の整理とデータベース化:上記の調査を通じて、部分図を含む詳細な画像データを蓄積した。また、既存の高精細画像(4×5ポジなど)も入手しそのデジタルデータ化を行い、データベース作成の準備を整えた。 3)分析と考察:作品調査(3)を通じ、元来縁起絵巻の最古例としての関心が高かった「北野天神縁起絵巻」に、漢文の原典を訓読した上で詞書を作成し絵巻化するという、鎌倉期の経説絵巻にも通じる特性があるという新たな着眼を得た。特に、今回調査を行った「北野天神縁起絵巻」(メトロポリタン美術館蔵)と承久本「北野天神縁起絵巻」(北野天満宮蔵)には、経説に基づく六道絵を盛り込むか否かという大きな違いがあり、両絵巻における典拠テキスト選択のメカニズムを分析することが、今後の課題のひとつとして浮上した。また、経説を絵画化する場合の絵巻と掛幅における場面選択や表現上の差異に関して、特に『法華経』と『十王経』を軸に考察し、その途中経過を口頭発表と論文として発表した。なお、掛幅「六道絵」(聖衆来迎寺蔵)における「閻魔王庁幅」のモティーフに、『白宝口抄』など密教図像集からの影響が濃厚であり、その表現が鎌倉期の絵巻にも継承されているという新知見を得、目下この点に関する論文を準備中である。
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