2011 Fiscal Year Annual Research Report
彫刻文化財の修理における3次元デジタルデータの実践的な利活用とその効果の研究
Project/Area Number |
22720055
|
Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
山田 修 東京芸術大学, 大学院・美術研究科, 非常勤講師 (30571723)
|
Keywords | 芸術諸学 / コンテンツ・アーカイブ / 情報工学 / 保存修復 / 文化財 / 3D |
Research Abstract |
平成23年度では前年度検討した3D技術について、実際に行っている彫刻文化財の修理物件に対して実践的に活用していくことで評価を行い、その際に生じる問題点や課題を明確にし、その改善点、解決法を検討した。3Dデータの処理を行うにあたってクリアしなければならない点がいくつか見出されたが、試行錯誤の結果解決され、実際に修理に適応することが可能になった。 まず修理に必要な材料の寸法は現場で測って算出しても、正確に把握することが困難であり、3Dデータから仮想材料をあてはめ、寸法を導き出すことで無駄なく行えることが分かった。 またNC切削技術を用いた修理における補作部材の制作は、部材間の取り合いの寸法や抜け勾配といったところで、検討を要したが、具体的な段取りや設定数値なども明確になり、すでに作業として実用化している。 その結果3D技術、手作業による修理技術、機械工作技術のそれぞれの得手不得手が明らかになり、それらの欠点をお互い補完する形で、単にデジタル技術の一方的な導入ではなく、バランスの良い関係をつくりながら作業が可能になると思われる。 今後技術的観点だけでなく、時間や費用が関係する生産効率といった点からも考察を行っていくことで、単に研究のとどまらず、実践的に取り入れられるべき技術として確立していくことを目指していく。特に今回の研究のメインテーマとなる伝統技法とデジタル技術におけるその垣根を超えた活用法といった受容性について、次年度以降の課題とした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初は彫刻文化財の修復に対する3Dデータの活用を試験的に行っていく予定から、一部ではあるが実際の物件に対し実践的な利用を試みて、一定の成果を収めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度は技術的な観点だけでなく、手作業による修理技術、機械工作技術にかかる時間やコストといった観点から考察していくことにより、実践におけるより有効な検証を行っていく予定である。また伝統技法とデジタル技術におけるその垣根を超えた活用法といった受容性について、実際の作業従事者の視点からヒアリングを行っていくとともに指針となるべきガイドラインを検討していく。
|