2010 Fiscal Year Annual Research Report
室町期漢籍注釈における五山僧・公家学者間のネットワークと学問環境の実態解明
Project/Area Number |
22720089
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
藤巻 尚子 早稲田大学, 文学学術院, 助教 (50551016)
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Keywords | 和漢比較文学 / 注釈書 / 五山僧 / 三国志 / 太平記 |
Research Abstract |
江戸時代に成立した、『太平記賢愚鈔』と『太平記鈔』内の三国志叙述を検討し、両テクストに室町期の五山僧間で展開されていた学問が継承されていることを確認した。これについては「『太平記鈔』における三国志の享受-『太平記賢愚鈔』との比較を始点として-」(三国志研究5 2010.9)にまとめたとおりである。室町期から江戸初期にかけて三国志が徐々に浸透していく過程に、室町期の学問が多大なる影響を与えていることに関しては、先の論文の他、「結びつけられる三国志と太平記-近世初期の学問・思想の一齣として-」(三国志学会第5回大会2010.9)、「中近世日本における三国志享受-『太平記』との関わりから-」(International Conference on "The Romance of the Three Kingdoms" : Its Historical Transmission and Enjoyment in East Asian Context 2010.11)でも紹介した。 さらに『太平記』と『三国志演義』の比較を行い、物語を作成する上で、学僧たちがいかに影響を与えているのかについて、考察した。その成果は「『三国志演義』と『太平記』における怨霊と聖地-関羽・新田義興の比較、付・アーサー王伝説との類似性-」(『中世の軍記と歴史叙述』竹林舎2011.4刊行予定)にまとめたが、この考察にあたっては、イギリスのグラストンベリ修道院における修道士たちの活動についても若干の言及を試みた。 また継続的な課題となるが、月舟寿桂が手がけた『史記鈔』を起点として、彼の人脈、交流関係の様を整理している。同書内には、散逸テクスト名も散見されることから、室町期の漢籍流入の様、そしてそれを利用し発展させていく五山僧の学問の実態が明らかになるものと考える。その成果は来年度中に論文化するつもりである。
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Research Products
(3 results)