2011 Fiscal Year Annual Research Report
「国民小説」とオリエント表象-19世紀イギリス・アイルランド文学史再考
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22720100
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
吉野 由利 一橋大学, 大学院・法学研究科, 准教授 (70377050)
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Keywords | 英文学 / アイルランド文学 / 国民小説 / オリエンタリズム / 文学史 / ネーション / ジェンダー / 植民地 |
Research Abstract |
本研究は、19世紀前半アングロ=アイリッシュ系作家達に確立された「国民小説(national tale)」に交錯するアイルランド像とオリエント像の検証を通じて、イングランドの文化的他者を重層的に解明し、イギリス、アイルランドの国民性の(再)定義について理解を深めることを目的とする。同時に、イギリス・アイルランド文学史観の見直しも試みる。2年目となる平成23年度の前半は、平成22年度に引き続き、18世紀から19世紀にかけてイギリス、アイルランドで生成されたオリエンタリスト主要テクストの検証を行った。平成23年度は、アイルランドにおけるオリエンタリスト思想に関連した論争を、イギリスの植民地としてのアイルランドという狭い文脈に限定することなく、ヨーロッパ他国のオリエンタリスト思想との関連も視野に収めたより広い文脈において分析することで理解を深めた。この手続きは、従来イギリス文学の派生系として捉えられる傾向にあったアングロ=アイリッシュ系文学を、より大きなヨーロッパ文学の伝統と関連づけようとする最近のアイルランド批評の潮流に連なる意義をもつ。平成23年度後半は、アングロ=アイリッシュ系作家、特にSydney Owensonの作品におけるオリエンタリスト思想への応答を考察した。以上の研究内容に関し、大英図書館、ロンドン大学関連図書館、フランス国立図書館等で資料調査を実施した。また、国際アイルランド文学研究協会(IASIL)の年次大会(ベルギーカトリック・ルーヴァン大学)で成果の一部を発表し、国内外の研究者と意見交換を行った。.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
夏季に国際学会で口頭発表を行うことになったため、同時期に予定していた国外での資料調査およびその前後の研究の期間を短縮せざるをえなかったが、大きな支障とはなっていない。「また、国際学会で国内外の研究者と意見交換を行うことは有意義であった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度以来の国民小説のケース研究の拡大を行う。平成24年度が最終年度になるので、ケース研究の時間が不足した場合は、主要作品に絞ることとする。それを踏まえて、アイルランド文学研究へのポストコロニアル批評理論の援用の妥当性を再考し、イギリス・アイルランド文学史観の修正を試みる。 また、成果公表の継続にも努める。
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Research Products
(2 results)