2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22720101
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
石割 隆喜 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (90314434)
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Keywords | 英米文学 / 文学論 / ピンチョン / ザック・スミス / ポストモダニズム / 小説論 |
Research Abstract |
ザック・スミス「重力の虹」イラストレーション作品(総数約750枚)を所蔵するウォーカー・アート・センター(アメリカ合衆国ミネソタ州ミネアポリス市)へ、春期休業期間を利用して赴いた(出張期間:平成23年2月12日~23日)。実質9日間の調査日の間に、本年度分の約250枚(1日約25枚)の作品調査にあたり、トマス・ピンチョン「重力の虹」本文との照合作業を行う予定であったが、この点に関して、芳しい成果は得られなかった。作品が展示から外されていたことはともかく、それ以上に、この件についてセンター側に尋ねた結果教えられた担当者に閲覧許可を求める問い合わせを行ったにもかかわらず、滞在期間中に返事が得られなかったことが大きな理由である。したがって、本年度の研究は、スミスのイラストレーション作品の書籍版のみを利用して、小説との照合作業を行った。その結果明らかになったのは、小説においては従来以上に濃密な内面描写が行われているにもかかわらず、イラストにおいては現代アートとマンガが融合したかのような人物のデフォルメが行われていることからくるギャップである。しかしより重大なのは、この主体表象の厚さとフラットさというギャップが矛盾とは感じられず、どちらも等しくポスト・ヒューマニスト的と感じられる点である。これはイラストと小説というメディアの違いに起因するところが大きいと考えられ、次年度以降はこの点に重点を置いて研究を遂行する予定である。しかしいずれにせよ、実際のイラスト作品の検討抜きでの考察であり、次年度以降は、閲覧が困難である事態に備え、同センターへの出張を行わずとも遂行可能な研究計画へと変更することも検討しなければならない。以上に加え、文学とアートとの相互関係(主体の問題をも含む)に関わる資料や図書の収集をも行った。
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