2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22720108
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Research Institution | Tohoku Institute of Technology |
Principal Investigator |
鈴木 淳 東北工業大学, 共通教育センター, 講師 (10552755)
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Keywords | 帝国主義 / 小説 / 共謀関係 / センセーション小説 / ニューウーマン小説 / セクシュアリティ |
Research Abstract |
当該年度(平成23年度)は、主に、前年度に日本英文学会第82回全国大会で口頭発表したWilkie CollinsのThe Frozen Deepに関する内容にさらにセンセーション小説やゴシックというジャンルの問題を加えて考察することで、研究テーマをより発展させて論文を作成した。その中では、Collinsの小説版テクストでは、当時のイギリス帝国主義の正当化の理由であったイギリス人ジェントルマンの「理性」が、イギリス人ジェントルマンの中に存在する「非理性」的要素によって崩されているだけでなく、実は「理性」による帝国の秩序自体がその「非理性」的要素に依存している可能性を明らかにした。これにより、これまで論じられてきた「帝国主義と小説の共謀関係」ではなく、逆に、Collinsの小説テクストは帝国主義のディスコースを転覆させる可能性があると読むことができるという結論に達した。「Collinsの小説家としての位置」について、新たな視点からsubversiveな要素を指摘できたことは意義があると思われる。このような研究成果には、作品のゴシック的な要素との関係で「センセーション小説作家としてのCollins」の位置がはっきりと把握できたことと、さらには、様々な論文や資料をもとに当時のフィクションの中に描かれた「看護」の意味を考察することで、CollinsとDickensの関係についてもより深く理解することができたことが大きいと思われる。 また、当該年度は、前年度に研究・考察を行った「ニューウーマン作家とThomas Hardy」に関する研究成果をまとめ、日本バーディ協会第54回大会で研究発表を行った。そこでは、HardyのJude the Obscureに登場するArabellaという女性の機能を考察し、テクスト中のArabellaのセクシュアリティの描写を当時の優生学の影響を受けたSarah Grandなどニューウーマン小説作家のテクストに描かれた「母性」や「性選択」のディスコースに対するHardyの反応ではなかったかという内容で発表を行った。
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