2010 Fiscal Year Annual Research Report
英国ドキュメンタリー映画の伝統とブリティッシュ・ニュー・ウェーヴの総合的研究
Project/Area Number |
22720111
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
佐藤 元状 慶應義塾大学, 法学部, 准教授 (50433735)
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Keywords | イギリス映画 / ドキュメンタリー / ニュー・ウェーヴ / リアリズム / モダニズム |
Research Abstract |
本研究は、イギリス映画のリアリズム映画の表象が、1930年代から1960年代にかけて、どのように変容してきたのかを時代ごとに検証し、20世紀のイギリス映画を把握するための一つのパースペクティヴを提唱するものである。初年度にあたる平成22年度は、「ドキュメンタリー映画と第二次世界大戦」をテーマに研究を遂行した。同テーマに関する基礎文献の読解を続け、映像資料の視聴を幅広く行った。年度末の3月には、ロンドンのBritish Film InstituteのNational Libraryにて、ドキュメンタリー映画作家ハンフリー・ジェニングスの未公開映像を視聴するとともに、同時代の映画雑誌、業界紙、新聞、パンフレットなどの調査を行った。ジェニングスに関する研究成果の発表は、平成23年度の課題としたい。 平成22年度の研究成果としては、(1)ニュー・ウェーヴと(2)トニー・リチャードソンに関する学会発表と、(3)キャロル・リードと(4)リチャードソンの作品に関する論考を挙げたい。(詳細は、項目の11を参照)(1)は、1950年代にリンジー・アンダーソンがジェニングスの仕事をどのように継承していったのかを明らかにしたものである。(2)は、リチャードソンの映画を原作小説と比較し、その特徴を映画史の観点から分析したものである。(3)は、リードの作品をジャンル論的な観点から読み解いた論文である。(4)は、リチャードソンの映画を「風景のリアリズム」という観点から分析したものであり、ドキュメンタリーのリアリズムとニュー・ウェーヴのリアリズムの接点を探求した点で、平成22年度の研究のなかでもっとも重要な仕事として位置づけられる。 本研究の意義は、ドキュメンタリー映画とニュー・ウェーヴの連続性をさまざまな観点から検証する点にあるが、平成22年度の研究成果は、その連続性を裏付ける、最初の重要なステップとなった。
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Research Products
(4 results)