2011 Fiscal Year Annual Research Report
ジャーナリズムと文学:ピータールー虐殺事件の受容に関する研究
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22720124
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
江口 誠 愛知教育大学, 教育学部, 講師 (50332060)
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Keywords | 英米文学 / ロマン主義 / イギリス文化研究 / ピータールー |
Research Abstract |
平成23年度は、前年度から進めている研究手法、つまり、ピータールー虐殺事件(Peterloo Massacre)に関する主張や思想に関する著作等の収集に引き続き専念するとともに、前年度同様、関連する同時代の文学作品及び雑誌記事等の精読を継続して行った。その研究成果として、計2本の論文を上梓することができた。 まず始めに、19世紀初頭の急進主義者であり職工詩人でもあるサミュエル・バムフォード(Samuel Bamford)が数多く残した著作の中から、特にピータールー虐殺事件に関係する詩に着目し、詳細に分析を行った。その結果、それらの詩が時代の変化、社会情勢及びイギリス政府の対応と無関係ではなかったことを明らかにすることが出来た。さらには、当時のリバプール内閣の数々の無慈悲な言論弾圧政策が、彼をはじめとする言論人や急進主義者らに心理的に極めて強い影響を与えていたのではないかということが確認された。 また、もう一方の研究成果は、同じく19世紀初頭に活躍した風刺画家ウィリアム・ホーン(William Hone)の数ある著作の中から、事件に最も関連した『ジャックの議会』(The Political House that Jack Built)に注目し、登場する象徴的なイメージや人物像を取り上げ、当時の文化的な背景に迫るというものである。その結果として、この作品は、事件の悲惨さや庶民の貧困の原因などを伝えるという主要な目的を有しながらも、ホーンはその目的達成のために、当時の特異な販売網、人気を博していた版画家ジョージ・クルックシャンク(George Cruikshank)の挿絵、及び当時の話題や流行を巧みに利用していたとことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、文化的な視点から十九世紀初頭イギリスにおけるジャーナリズムと文学との関係を探るものであり、雑紙論文においてその研究成果の発表も行っていることから、現在の所はおおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終年度である平成24年度は、前年度までの資料収集や研究で得られた成果をもとに、本研究の第二の目的である、ジャーナリズムと文学との関係についてまとめる作業を行う予定である。
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Research Products
(2 results)