2010 Fiscal Year Annual Research Report
18世紀フランスにおける「エネルギー」と近代の成立
Project/Area Number |
22720136
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
玉田 敦子 中部大学, 全学共通教育室, 講師 (00434580)
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Keywords | 18世紀 / フランス:イギリス:アイルラン / 近代 / エネルギー / 啓蒙思想 / 公共圏 / 科学史 / 修辞学 |
Research Abstract |
「エネルギー」という語は、17世紀まで聖体論争の争点となる「神的な力」とされていたが、18世紀の辞書はその第一の語義を「人間の文体の力」とするようになる。本研究課題は、近代の鍵概念としての「エネルギー」の検討をとおして、科学技術の発展と美学概念・文学潮流との結びつきを探り、「啓蒙」を新たな側面から照射することを目指している。 本年度は、まず18世紀における「エネルギー」概念の変化に古代修辞学が与えた具体的な影響を分析すると同時に、この概念の「近代性」について考察した。 4月~9月は、日本学術振興会「優秀若手研究者海外派遣事業」により渡仏し、パリ第4大学招聘研究員としてM.ドロン教授のもとで研究活動に従事、仏国立図書館にて資料収集をおこなった。 本年度は特にクインティリアヌス、キケロ、ロンギノスがうちたてた古代修辞学理論が、ベルナール・ラミ、シャルル・ロラン、シャルル・バトゥによる揺籃期の18世紀フランス修辞学教科書に及ぼした影響について分析を行った。18世紀学会、仏文学会WS、「公共知」WS(題目等別欄参照)の三回の発表においては、それぞれ「趣味(美的判断)」、「熱狂」、「速度」をテーマとして設定し、18世紀フランスにおいて、17世紀の古典主義表象システムに立脚した「明晰な文体」とは異なる「凝縮された文体」が求められるようになった過程を明らかにした。 17世紀の「明晰な文体」が簡潔な文章によって「曖昧さ(obscurite)」を避けることを至上命令としたのに対して、啓蒙期には「短い表現を連ねて多くの内容を語る」ことが「凝縮された文体」を生み出し、文体に「エネルギー」と「速度」といった新たな力を与えるとされていた。さらに、ラミ、ロラン、バトゥの教科書については、各版を比較検討することによって、この価値変化に特に強い影響を与えていたのが、1674年にボワローがフランス語に翻訳・出版したロンギノスの『崇高論』であることを論証した。
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Research Products
(4 results)