2012 Fiscal Year Annual Research Report
18世紀フランスにおける「エネルギー」と近代の成立
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22720136
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
玉田 敦子 中部大学, 人文学部, 准教授 (00434580)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2013-03-31
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Keywords | 18世紀 / エネルギー / 崇高 / 修辞学 / 啓蒙 / 趣味判断 / アカデミー・フランセーズ / 国際情報交換 |
Research Abstract |
本研究課題は「18世紀における<ことば>のエネルギー」についての多面的な考察を目的としている。本年度は、特に、「<ことば>のエネルギー」に関する重要な類概念である、「趣味判断」と「熱狂」の概念を中心に考察を深化させた。業績欄に掲載した、著書、論文、学会発表において明らかにした内容を以下に要約する。 「趣味判断」は、古代ギリシア、ローマで生まれた概念であるが、18世紀において流行した「趣味」概念には17世紀以前には見られない近代性がある。啓蒙の世紀に現れた新しい「趣味」概念は、当時刷新されたフランス語修辞学とともに発展したが、そこではロンギノスとボワローによる「崇高論」が3つの重要な役割を果たしていた。まず、趣味判断が天性の能力ではなく、訓練によって習得される技術とされるようになったことが挙げられる。さらにボワローが『崇高論序文』においてコルネイユの作品を崇高の例として用いたことを端緒に、啓蒙期の修辞学においてはフランス古典主義時代の文学作品が古代ギリシア、ローマの作品に比肩する「新しい古典」となり、趣味判断の基準とされていく。そしてロンギノスとボワローの「崇高論」が果たしたもっとも重要な役割は、趣味判断に関する議論を17世紀古典主義文学理論が重んじた「規則」への信奉から解き放ち、趣味を理性による冷静な判断ではなく、「熱狂」をともなう判断とするための論拠となったことである。ロンギノスとボワローが論じた「崇高」は、最終的には言語化できない、あるいは言語化することによって効力を失うという特徴をもつ趣味判断に固有の超越的な力を説明するために不可欠なものであった。いずれにしても、18世紀の修辞学が担っていた「趣味判断」の教育には、個人が「熱狂」を感じながら、作品の比較という訓練によって差異への感受性を磨き、自らを鍛えるという「啓蒙」の重要課題が描かれていると言える。
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Current Status of Research Progress |
Reason
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(3 results)