2011 Fiscal Year Annual Research Report
日本語の自発音声における韻律句末音調と意味機能の分類に関する研究
Project/Area Number |
22720166
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
田頭 未希 東海大学, 外国語教育センター, 講師 (50408019)
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Keywords | 話し言葉 / 音調パタン / 意味機能 / 談話構造 / 韻律句末 / PNLP / 体系的分類 / コーパス |
Research Abstract |
本研究は2カ年計画で、自発音声特有の言語現象を音声情報と談話構造情報の両面から分析し、音調パタンと意味機能の実態を調べ、その体系的分類の提案を試みるものである。すでに多くの研究がなされてきたいわゆる発話末となる「文末」ではなく、「韻律的句末」という点を扱っていることが本研究の特徴の一つといえる。『日本語話し言葉コーパス』のモノローグ音声(約39時間分)を中心に分析を行い、全品詞のさらにその下位要素(例えば、格助詞「を」「の」等それぞれの要素)に対する韻律句末の音調パタンを調べた。音調パタンの中の「上昇下降調」に関しては、可能な限り実際の音声データを聞き、音調パタンの下位分類(どこで上昇し下降しているのか)を行った。 初年度は特に、格助詞や、2モーラから構成されている接続助詞「ので」「から」について意味機能と音調との関係を分析した。「から」「ので」は意味機能が似ているが表出されやすい音調パタンは異なることが定量的データから示された。また形式的観点から上昇調と丁寧さの関与を指摘することができる。 最終年度は、接続助詞「が」を中心に分析を行った。主な意味機能を6つに分類し、それらと音調との関係を分析した。「が」に関しては、意味機能と音調で1対1の強固な関係が見られる訳ではないが、ゆるやかな対応関係があることが示唆できる。例えば「が」によって談話主題を提示する時には上昇調が用いられやすく、説明や前置き、または逆接や対比の用法では上昇下降調が用いられやすくなるなどがあげられる。接続助詞「が」は類似の意味機能をもつ「けど」に比べ、意味的、語用的にも曖昧な繋がりを示すという点から考えると、音声も意味と緩やかな対応関係にあるのは、まさに「が」の特徴を表していると考えられる。 全品詞の分類を行うことは出来なかったが、『話し言葉コーパス』の中で頻度が高い品詞や要素のいくつかについて、意味機能・用法と音調の関係を分析し、両者の対応関係を定量的データから示すことができ、これらの結果は音吉合成や音声認識の分野への応用につながると考えられる。
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