2010 Fiscal Year Annual Research Report
開成所刊行辞書・単語集の基礎的研究とその翻訳語の研究
Project/Area Number |
22720176
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
櫻井 豪人 茨城大学, 人文学部, 准教授 (60334009)
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Keywords | 国語学 / 洋学資料 / 翻訳語 / 辞書 / 単語集 |
Research Abstract |
本研究の目的は、幕末の洋学研究教育機関である開成所(東京大学の前身の一つで、蕃書調所・洋書調所を改称したもの)から刊行された、西洋語対訳辞書・単語集の編纂方法を追究し、蘭学時代とは異なる翻訳語の存在やその性質を明らかにすることにある。 今年度の成果は、2007年3月に発見され同年7月に影印刊行された洋書調所刊『英和対訳袖珍辞書』の草稿を用い、『英和対訳袖珍辞書』初版の編纂方法の解明を試みたことにある。現存草稿の全21枚は全体の3%強の分量に過ぎないが、墨書の本文に対して朱書訂正が施され、編纂初期の姿が窺えるものとなっている。 従来『英和対訳袖珍辞書』は、底本であるH.Picardの英蘭蘭英辞典第2版(1857年刊)の英蘭の部、および同辞書初版(1843年刊)の英蘭の部について、そのオランダ語部分を蘭日辞典『和蘭字彙』(1855-58年刊)によって訳すことで導き出されたと見られる訳語の多いことが知られていた。しかしその一致率は全体の約6~7割程度にとどまると報告され、残りの訳語のうちのごく一部はW.H.Medhurst英華辞典(1847-48)から導き出されたことが知られているものの、他の大半の訳語は典拠が明らかにされていない。 今回、草稿の現存している範囲について、同時代に参照し得たPicard以外の英蘭辞典(Holtrop・Hooiberg・Bomhoff)や蘭蘭辞典(Weiland)と『和蘭字彙』とで対照させたところ、実際にそれらの蘭書によって導き出されたと見られる語のあることがわかってきた。このことにより、上記の訳語の一致率は、他の英蘭辞典や蘭蘭辞典を媒介とする方法を視野に入れて改めて検証される必要が出てきた。またこのことは、初版の編纂方法が依然としてオランダ語に強く依存したものであったことを物語っており、4年後に刊行された第二版とは対照的な編纂方法であったと見られる。
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Research Products
(3 results)