2011 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本語「点字資料」を用いた仮名遣い改定史の調査研究
Project/Area Number |
22720188
|
Research Institution | National Institute for Japanese Language and Linguistics |
Principal Investigator |
中野 真樹 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 研究情報資料センター, プロジェクト奨励研究員 (30569778)
|
Keywords | 日本語学 / 点字 / 表記 / 仮名遣い |
Research Abstract |
平成23年度は,点字資料として大きな価値をもつ大正期の『点字大阪毎日』の一部について,写真撮影および点字から墨字への翻字・データ化をおこなった。また,そのデータを利用し,本資料の仮名遣いについての調査をおこなったところ,以下のことがあきらかになった。 (1)長音表記には長音符が使用されている。 (ただし,ウ列オ列にかんしては現代仮名遣いでは「う」となる部分にかぎられる。またI列にかんしてはI列+いという形が字音語を中心に多くあらわれる) (2)助詞「は」「へ」「を」はそれぞれ「わ」「え」「を」と表記される。 (3)四つ仮名の表記は歴史的仮名遣いと共通する部分が多い。 これらのうち,(1)(2)については,現行の点字の仮名遣いと共通するものであり,強い関連があることがわかる。ただし(3)については,いずれの時代かに表記の方針の転換があったものと考えられる。 この結果にかんして,平成22年度にデータ化した筑波大附属視覚特別支援学校資料室蔵『点字尋常小学国語読本』との比較をおこなったところ,その仮名遣いは多くの点で共通していることがわかった。 さらに現行の点字の仮名遣い(『『日本点字表記法2001年版』(日本点字委員会)』)と比較すると,四つ仮名のとりあつかいなどに一部違いがみられるものの,長音表記や助詞の用字には共通点が多くみられた。日本語点字の仮名遣いについては,大正期にはその大枠がさだめられており,改定がおこなわれながらも現行の点字仮名遣いへとつながっていることが,大正期の点字新聞の仮名遣いの調査・研究をおこなうことで確認できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
22年度は近代の点字による国語教科書についてデータ化および調査を行った。また,23年度は大正期の点字新聞のデータ化および調査を行った。点字新聞は量が膨大なため,昭和初期の資料の調査がまだ完了していない。ひきつづき点字新聞のデータ化と調査を行う必要がある。
|
Strategy for Future Research Activity |
ひきつづき,点字新聞の調査をおこなう。『点字大阪毎目』につづき,『点字毎日』の調査・研究をおこない,大正期から昭和初期の仮名遣い研究を中心に現在にいたるまでの点字資料の調査をおこなうことで,点字の仮名遣いの改定の過程をより詳細に明らかにする。
|
Research Products
(2 results)