Research Abstract |
本研究は,日本人英語学習者の産出単位を分析可能にする新たな学習者コーパスの構築により,日本人英語学習がどのような言語単位でコロケーション知識を保持し,また,運用しているのかを明らかにすることを目的としている。この研究課題に取り組むため,本年度は,以下のような研究計画を遂行した。 日本人英語学習者17名(習熟度は中級程度)に対し,昨年度設定した「学校教育(School Education)」というテーマを与え,60分間で作文を書いてもらい,作文過程のデータを収集した。なお,昨年度使用した記録システムに改善点が見つかったため,新たなシステムを再構築している。 収集したデータから1人あたり平均して約335語の作文データが得られ,作文の産出過程を分析した結果,90個のコロケーション(2語以上で構成され頻度1以上の表現のみが対象)が抽出された。具体的には,"I think" や "it is"などの表現が挙げられる。加えて,作文「結果」のデータと作文「過程」のデータそれぞれから抽出されたコロケーションを比較した結果,異なる表現が観察された。言い換えれば,作文結果から得られるコロケーションは,あくまで頻度が高い表現であったということであり,まとまりとして処理されているかについての十分な証拠を与えるものではないということである。したがって,まとまりとして処理され得る表現を抽出するには,本研究で用いたような,より直接的な手段を用いて作文過程を分析する必要があると言える。 結果として,日本人英語学習者は,コロケーション知識を保持しているものの,その運用は決して流暢に行えるわけではないということが分かった。なお,2011年9月にベルギーで開催された学習者コーパス研究に関する国際会議にて,上記の成果を報告した。
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