Research Abstract |
本研究では,英語学習法として注目を集めているシャドーイング(聞こえてくる音声をほぼ同時にあるいは少し遅らせて,できるだけ正確に繰り返して発音する英語学習法)に焦点を当て,シャドーイング中における脳内言語処理メカニズムを解明すること,とりわけシャドーイング,リスニング,リピート中に活性化する脳内部位の違いの特定,ならびに初出条件(学習していない英文)と既学習条件(学習した英文)でのシャドーイング中に活性化する脳内部位の違いの特定を目的として,NIRS(近赤外光法脳計測装置)による脳内血流および酸素消費変化に関する計測実験を,被験者1名(女性,30歳代前半,留学経験なし,英語専門教育経験なし,英検2級取得)を対象に実施した。 実験課題はリスニング,シャドーイング,リピートの3課題,それぞれ初出条件,既学習条件に分け,合計6課題の計測実験を行った。各課題とも,開始から30秒間の休憩をはさんで,同一英文の課題を3試行ずつ行った。 COE(脳酸素交換機能マッピング法: Cerebral Mapping of Oxygen Exchange)計測法による解析の結果,リスニング課題では初出条件において左聴覚野の酸素消費が減少したが,既学習条件において左聴覚野の酸素消費が増加した。シャドーイング課題では,初出条件において左聴覚野と運動系領域およびBA40の酸素消費が増加した。既学習条件では,初出条件と比較して,左聴覚野の酸素消費が減少傾向であった。リピート課題では,他課題と比較して,聴覚野,運動性言語野,口腔運動領域を含む広い領域において,初出と既学習の両条件で,広範に強い酸素消費が生じた。 総括として,リピート課題では,聴覚野と運動性言語野(ブローカ野)付近の酸素消費について,聴取時と発話時とで違いがあることが確認された。シャドーイング課題では,聴覚野と運動系領域において同時に酸素消費が行われており,両者の繋がりを強化していることを示す知見が得られた。
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