2011 Fiscal Year Annual Research Report
近世阿波における山村の地域特性に関する構造論的研究―生業・流通・社会構造―
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22720248
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Research Institution | Naruto University of Education |
Principal Investigator |
町田 哲 鳴門教育大学, 大学院・学校教育研究科, 准教授 (60380135)
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Keywords | 日本史 / 山村 / 生業 / 地域 / 阿波 / 林業 / 流通 |
Research Abstract |
本研究の目的は、阿波の山間地域を素材に、近世日本の山村における生業と流通の構造について、(1)山村における所有と生業の実態、(2)山村の村落共同体における社会的関係、(3)モノを通じた流通構造(都市との関係構造)という3つの地域史的視角から解明することである。これにより、近世阿波における山村の地域特性を解明し、山村を閉ざされた社会としてではなく、近隣の都市や遠隔地の巨大都市との関連をもつ、多様で可能性を秘めた社会として捉え直すことを目指している。 本研究では、(1)基礎史料調査・(2)エリア研究(3年間)・(3)比較類型研究(最終年度)という、3つの調査研究レベルを設定し、あわせてその成果を(41)データベース化および翻刻史料集の作成(3年間)というかたちでめざしている。2年目にあたる本年度は、(2)エリア調査・研究として特に林業地帯・木頭地域を対象に研究を推進させることができた。具体的には、現地調査を実施し、聞き取りや古文書調査をおこなう一方で、御林番人家の史料群・露口家文書を分析し、あわせて初年度に蓄積した徳島藩領の山村支配基礎資料を用いて検討した。その結果、那賀川流域の御林と、そこを管理した御林番人の存在に着目することで、御林政策の変遷(近世前期の御用材確保から請負積極化へ)や、その中での御林番人の機能的性格および、地域社会の変容について解明することができた。またその成果は、地元での研究会だけでなく、アメリカ合衆国・イエール大学での特別シンポジウムでも報告することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最終年度の比較類型研究にむけ、基礎史料調査、エリア調査・研究を順調に進めてきている。またその分析を進めた学会発表をしているが、来年度は論文として発表できるようにする。
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Strategy for Future Research Activity |
計画どおり、エリア研究とその研究発表を進めるとともに、領内3地域の山村の比較類型研究を進める。なお、データベース化および翻刻史料集の作成を予定しているが、これは従来、部分的にしか翻刻公開されていない「日本林制史調査資料」の徳島藩部分をひろく利用できるようにすることを目的としている。ただし、基礎史料調査によって、関係史料が予想以上に膨大に存在することが判明しており、若干の作業の遅れが予想される。そこで、翻刻対象を御林番人に限定するなど工夫し、史料所蔵機関の助言を得ながら、史料集作成にむけ、鋭意努力したい。
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Research Products
(2 results)