2010 Fiscal Year Annual Research Report
GISを活用した中世成立期京都と貴族社会の研究-都市災害・造営・政治経済の関係性
Project/Area Number |
22720255
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
佐古 愛己 立命館大学, 文学部, 准教授 (70425023)
|
Keywords | 移徙 / 平安京 / 成功 / 天皇 / 上皇(院) / 受領 / 造営 / 火災 |
Research Abstract |
古代都城平安京から中世都市京都への変貌は、律令制的都市支配制度の形骸化、解体による治安の悪化や都市民による巷所の形成など、権力の弱体化や不在に起因していると主に考えられてきた。本研究の目的は、古代末・中世成立期(摂関・院政期)の貴族社会構造と都市形成との関連に焦点を当て、当該期の政治・経済・人事制度に、放火などの都市災害とその復旧のための造営事業を創出する構造的問題を見い出し、権力者側によって積極的に中世的都市の構築が図られていた側面を解明する点にある。本年度は主に、天皇・上皇の移徙関連の史料収集を収集して、これをもとに「移徙データベース」を作成し、「移動主体」、「移徙年月日」、「旧宅・新宅の名称」、「所在地」、「移徙経路」などの属性に分類し、新宅(内裏・御所)の造営に関する情報(造営を請け負った受領名、用途調達国など)や移徙の事由(焼亡、陰陽道的禁忌、造営)を調査した。その結果、摂関期の天皇の移徙は、皇居焼亡という物理的に居住存続が不可能な状況が生じた際に実行されたのに対して、院政期になると、陰陽道的禁忌など精神的な事由による移徙の増加傾向がみられるとともに、上皇の移徙は、かかる状況が発生していないにも関わらず、新造御所の完成に伴って移徙が頻繁に実施されているという事実が浮かび上がった。その背景として、造営を請け負い重任や遷任を目論む受領と、成功によって諸国の富を都での大規模造営に利用しようとする院の思惑があったと考えられる。即ち、当該期の国家財政制度や造営システム、成功という人事・昇進システムの構造的な問題が、当該期の大規模造営とそれによる頻繁な移徙を創出していると推察した。以上の考察結果の一部を、「摂関・院政期における天皇・上皇の移徙」と題するテーマで論文を作成し、2011年度秋に刊行予定の『平安貴族社会における秩序と昇進』において公表する。
|
Research Products
(3 results)