2012 Fiscal Year Annual Research Report
GISを活用した中世成立期京都と貴族社会の研究-都市災害・造営・政治経済の関係性
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22720255
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
佐古 愛己 立命館大学, 文学部, 講師 (70425023)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 移徙 / 平安京 / 貴族 / 受領 / 成功 / 人事 / 位記 / 口宣案 |
Research Abstract |
古代都城平安京から中世都市京都への変貌は、律令制的都市支配制度の形骸化、解体による治安の悪化や都市民による巷所の形成など、権力の弱体化や不在に起因していると主に考えられてきた。本研究の目的は、古代末・中世成立期(摂関・院政期)の貴族社会構造と都市形成との関連に焦点を当て、当該期の政治・経済・人事制度に、放火などの都市災害とその復旧のための造営事業を創出する構造的問題を見い出し、京中においても権力者の関与によって中世的都市の構築が図られていた側面を解明する点にある。 本年度は、主として従来の歴史学研究の手法による文献史学的見地から、平安京内の災害(主として放火)および受領成功、天皇・院の移徙に関する史料の収集・整理、データベースの作成を行った。また、人事制度にかかわる調査・研究から、新たに生起した問題関心について追加調査、研究を実施した。 A:平安京内の災害の史料収集:平安時代の都市災害である火災(特に内裏・大内裏・院御所の焼亡)に関する史料収集を行い、火災の原因、出火場所、火災後の対応などについて調査・検討を加えた。データベース化作業を継続実施している。 B:「天皇・上皇・女院の移徙」関連の史料収集および移徙の歴史的意義の研究:これまでに収集した摂関期から白河・鳥羽院政期の移徙に関する史料に加え、後白河院院政期の史料収集およびデータベースを作成した。 C:叙位に関する研究:人事制度(叙位)に関する調査・研究を通して新たに生起した問題関心である、平安時代以降の位記の変化や口宣案の出現の背景について、調査・検討を開始し、研究成果の一部を学会で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画に対して、おおむね予定通りに進んでいる。加えて、本年度は、人事に関する調査・研究の過程で生起した新たな課題にも取り組んだ。ただし、時間不足となり、可視化(「天皇・上皇・女院の移徙」データベースを利用して移動経路を、GISソフトを活用して図示する)の試みに関する作業に関しては、若干の遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
2013年度は本研究の最終年度に当たるため、これまでに収集した史料および作成したデータベースを再度見直して完成度を高めるとともに、これらを活用して、研究成果の取りまとめを行うべく、論文の執筆に取り掛かりたい。 また、本年度より開始した新しい課題についても、調査・研究をすすめ、学会報告した内容をもとに文章化するよう努めたい。 可視化作業に関しては、研究機関の変更などがあり、GISの技術を有する院生などの協力を得る方法やGIS関連ソフトの利用環境の確保について模索する必要がある。協力を得るのが困難な場合は、自身で実施することとし、可能な限り計画通り進めていきたいと思う。
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Research Products
(3 results)