2011 Fiscal Year Annual Research Report
エジプト先王朝時代における硬質土器の生産地に関する基礎的研究
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22720294
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
馬場 匡浩 早稲田大学, 総合研究機構, 助教 (00386583)
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Keywords | エジプト / 先王朝時代 / 硬質土器 / マール・クレイ / 胎土分析 / 生産地問題 / パイロテクノロジー |
Research Abstract |
古代エジプト先王朝時代に誕生する硬質土器は、石灰質粘土を用いて焼いた薄くて硬い土器であり、それまでの軟質土器とは全く異なる新たな土器である。その生産地をめぐっては、レヴァント地方からの伝播を起源とし、模倣生産がエジプト各地で行われたとの見解があるが、その根拠となる実証的研究は皆無に等しく、起源と生産地の問題は全く分かっていないのが現状である。そこで本研究では、考古学的発掘調査と理化学的胎土分析を軸に、先王朝時代の硬質土器の生産地および製作技術の解明に向けた基礎データを得ることを目的に掲げる。本年度の研究概要は以下の通りである。 発掘調査は、当時の土器製作および熱利用の技術レベルを理解するため、これまで継続しているヒエラコンポリス遺跡HK11C地区にて実施した。ここではエジプト最古の土器焼成およびビール醸造の遺構がみつかり、話題となっている地区である。本年度は昨年度に続き、日乾煉瓦の壁体をもつ2つの遺構を調査した。壁体は手捏ねによる日乾煉瓦で構築されており、エジプトにおける煉瓦建築の初期例と思われた。そこで炭素年代測定を実施したところ、3514-3109calBCと3627-3363calBCであり、上エジプトで最古の例であることが判明した。壁体内部は炭化物や灰、強く被熱した面が広がり、熱利用を目的とした施設であると考えられ、当時のパイロテクノロジーを知る情報を得ることができた。 一方、胎土二分析については、2011年のエジプト争乱により、他の主要遺跡での胎土サンプリングを実施することができず、その代わりに、大芙博物館に所蔵される土器片からICP分析用の試料を得た。この他、生産地の一つと考えるケナ県にて踏査を膏い、石灰質粘士のサンプリングを行った。ICP分析は来年度にカイロにて実施する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
エジプト争乱により、ヒエラコンポリス遺跡以外の主要遺跡でのサンプリングに遅れがでたが、それを補うために、大英博物館が所蔵するそれらの遺跡出土の土器片からICP胎土分析用のサンプリングを行い、一定量のデータを取得することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2012年度は最終年度となるため、まずはこれまで得たサンプリング試料のICP胎土分析を実施し、そのデータをもとに起源と生産地の問題について検討を加える。平行して発掘調査を継続して焼成技術の発展を解明し、理化学的分析成果と総合する。
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Research Products
(7 results)