2010 Fiscal Year Annual Research Report
アルメニアの完新世初頭における先史文化の考古学研究
Project/Area Number |
22720301
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Research Institution | Independent Administrative Institution National Institutes for Cultural Heritage Tokyo National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
有村 誠 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 文化遺産国際協力センター, 特別研究員 (90450212)
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Keywords | アルメニア / コーカサス / 完新世 / 新石器時代 / 先史時代 / 農耕牧畜 |
Research Abstract |
本研究は、アルメニアの完新世初頭の遺跡を調査することにより、農耕牧畜という新たな生業が到来し拡散していく過程において、それぞれの集団がどのような対応戦略をとったのか明らかにすることを目的とする。 本年度は、2010(平成22)年9月に、将来的な発掘調査の候補となるような完新世初頭の遺跡を発見するために、アグボリックAghvorik平原(アルメニア北西部:アルピ湖東側)とアグステフAgstev渓谷(アルメニア北東部:イジェバン周辺)において考古学踏査を実施した。アグボリック平原は小コーカサス山脈の山間部にある小さな平原で、黒曜石とデイサイトの産地が確認された。それぞれの産地では、旧石器時代に属するハンドアックスや石刃・薄片が多数採集された。しかし、本研究が主な対象としている完新世初頭の遺跡に関してはほとんど確認することができなかった。 アグステフ渓谷は、下流でアゼルバイジャンのクラ盆地に繋がる全長約20kmの渓谷である。上流では谷の斜面に多くの岩陰・洞窟が確認でき、谷幅の広がる下流では、比較的大きな河岸段丘の発達がみられた。こうした地形を利用した先史時代の遺跡の存在が推定され、実際にいくつかの洞窟や河岸段丘上では、完新世のものと思われる土器や石器などの遺物が採取された。来年度以降、いくつかの洞窟や開地遺跡で試掘調査を実施する予定である。 また、アルメニアの資料と比較するために、グルジア国立博物館に収蔵されている完新世初頭の考古資料を実見した。まず、確実に完新世初頭に位置づけられる遺跡はグルジアに非常に少ないことが明らかとなった。さらに、これら完新世初頭とされるグルジアの遺跡出土の石器資料は、アルメニアの完新世初頭の石器と比べると大きく異なることも判明した。一方で、グルジアで前6千年紀にクラ川流域で隆盛するシュラベリ文化の物質文化は、同時期のアルメニアのものと強い関係がみられた。
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Research Products
(6 results)