2011 Fiscal Year Annual Research Report
アルメニアの完新世初頭における先史文化の考古学研究
Project/Area Number |
22720301
|
Research Institution | Independent Administrative Institution National Institutes for Cultural Heritage Tokyo National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
有村 誠 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 文化遺産国際協力センター, 特別研究員 (90450212)
|
Keywords | アルメニア / コーカサス / 完新世 / 新石器時代 / 先史時代 / 農耕牧畜 |
Research Abstract |
本年度は、昨年の調査により先史時代遺跡の存在が明らかとなったアグステフAgstev渓谷とその周辺で考古学調査を実施した。アグステフ渓谷の周辺には、東西方向へと走る渓谷がいくつもあることから、古代においてアルメニア側の山岳地帯からアゼルバイジャン側の盆地へ抜けるルートであった可能性が高い。昨年の調査に引き続き考古学踏査を実施したところ、黒曜石製石器を採取できる河岸段丘上の地点や洞窟をいくつか発見した。アゼルバイジャン国境近くまで踏査を実施したが、この地域にはテル型遺跡はまったく発見されなかった。 昨年発見したイジェバンの北にあるゲタホビットGetahovit洞窟で試掘調査を行った(写真1)。表土直下から深さ40cmほどで、ピットや炉跡からなる中世の居住層が確認された。さらに、中世の居住層の下からは、白い層で覆われた厚さ10cm程度の粘土層が発見された。この粘土層に伴い柱穴の痕跡も複数も発見されたことから、先史時代の住居の床であることが確認された。また、床上の白い層は、洞窟内の壁に生じているトラバーチンを採取し、敷きつめたものである可能性が考えられた。この居住層からは、黒曜石やフリントの石器(写真2)と土器片が数点出土するのみで、時期決定の指標となるような考古遺物の出土がなかった。しかし、幸いにも数点の炭化物を採取したので、放射性炭素年代測定法で測定したところ、前5千年紀前半の値が得られた(BETA-306022:5490±30 BPまたは4360-4320 cal Bc)。ゲタホビットは、アルメニアでも類例のほとんどない銅石器時代の洞窟遺跡ということになる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画していた考古学調査を実施でき、合わせて分析も順調に進んでいるため。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続きゲタホビット洞窟の発掘を行い、同洞窟の全容を明らかにすることを目指す。コーカサスでも例のない、銅石器時代の居住形態が明らかになることが期待される。 また、アルメニアでの調査成果を周辺地域と比較するために、グルジアでの発掘調査を検討している。発掘調査の許可が下りない場合は、グルジアでの資料調査を行う。
|
Research Products
(3 results)