2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22720314
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
山村 亜希 愛知県立大学, 日本文化学部, 准教授 (50335212)
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Keywords | 港町 / 中近世都市 / 景観復原 / 景観史 / 空間構造 |
Research Abstract |
(1)平成22年度より行っている、中近世移行期港町の景観復原研究の方法論の検討を継続して行った。 具体的には、駿河清水・江尻を事例として、報告者が城下町の景観研究にて培った通常の復原方法を土台とし、これに(1)大縮尺の地図上での地形復原と、(2)地割形態の分析の深化を追加して、当該期港町の景観復原に適当な方法を検討した。この成果を現在まとめる段階にあり、平成24年度には第15回国際歴史地理学会にて口頭発表を行い、そこでの議論をふまえて、史学・地理学学術雑誌に論文を公表する予定である。 (2)全国の当該期港町のうち、景観研究が既に存在する港町の一覧表(データベース)の作成に着手した。各港町について、(1)景観に関する先行研究、(2)景観復原の根拠とされた史資料(同時代史料、発掘調査等の考古学データ、近世地誌、近世絵図、伝承、地籍図、都市計画図、地質・地層データ)、(3)中近世の政治・社会・宗教・文化的文脈、流通・経済圏、交通ネットワーク、政治権力の支配領域といった地域構造に関する情報を、可能な限り網羅的に収集している。本年度の調査により、現段階で(1)~(3)のデータのそろう調査研究に適した港町は、西日本(東海・北陸以西)に集中することが分かった。そして、当該期に最盛期を迎える銀鉱山の輸出に利用された港町が立地する石見に注目して、その立地と形態を分析・地図化し、講演会と研究会にて成果報告を行った。同様に、周防と尾張、阿波においても、城下町を含めた当該期の地域構造の中で、港町がどのような機能を持ち、位置づけられるのかを考察し、論文や講演として発表した。このうち講演は、可能な限り現地の研究者との情報交換と専門的知識の還元を目的に、地元で開催される学際的なシンポジウムで行うよう努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
駿河江尻・清水の景観復原研究は、研究を進める過程で、当初の想定以上に地籍図の範囲を拡大して、地割分析を行う必要があることが判明したため、平成23年度中に研究を完了させることができなかった。しかし、史料収集は完了し、その分析成果をまとめつつある段階にあり、研究期間内には成果を公表することができると予測される。港町景観研究の一覧表(データベース)作成に関しては、当初想定した全国規模での収集よりも、研究・資料の偏在を考慮して西日本を中心として行う方が現段階では効率的であると判断し方針を一部修正したため、研究期間内に目的はおおむね達成しうると予測している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、駿河江尻・清水の景観研究をまとめて学術雑誌に掲載すると同時に、西日本における港町景観研究の一覧表(データベース)作成を進める。その過程で、西日本(主に東海・中四国)で地域を代表する港町にも関わらず、不十分な景観復原案しか得られないときには、新たに景観復原研究を行う。とりわけ西日本の港町は、城下町も含めた地域構造全体に占める位置・役割の考察なしで、景観の特徴を見出すことができないので、景観復原の際には城下町も含めた全体の地域構造や、城下町との景観比較を含めて研究を遂行する予定である。その成果は、講演、学会発表、論文で順次公表する。
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