2011 Fiscal Year Annual Research Report
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22720323
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
橋村 修 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (00414037)
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Keywords | 回游魚 / 資源利用 / シイラ / パラオ / 歴史地理学 / 民俗学 / マルタ / 台湾 |
Research Abstract |
本研究は、基礎研究と方法論の提示が求められている漁業史研究を深化させながら、歴史史料(絵画資料を含む)と聞き取り調査を組み合わせた方法論の確立をめざしておこなわれるものである。申請者は、日本列島、東アジア、東南アジアにおける漁携活動、漁業経済に関する歴史地理、文化人類学的研究を進めている。本研究は、(1)回游魚と人との関わりについて漁業絵図・史料と現地調査に基づく歴史地理学研究を南九州、南西諸島でおこなう、(2)回游魚利用をめぐる比較文化論(日本とアジア、アジアとヨーロッパ)、(3)漁業史研究における歴史資料とインタビュー記録との結合を目指した方法の確立を目指すことを目的としている。本年度は、東日本大震災にともなう被災地の漁業史調査もおこなった。 本年度の調査研究成果は国内調査と国外調査に区分される。 国内調査は、昨年度に引き続き薩摩藩領の水産関係古文書調査を鹿児島県奄美市立博物館に寄託されている童虎山房文庫(原口虎雄鹿児島大学名誉教授の文庫)でおこない、さらに史料記述に係る現地調査を鹿児島県江口漁協ほかでおこなった。また、漁師から過去20年分の市場への魚の販売伝票を預かり分析作業を進めている。東日本大震災被災地の漁業史調査も宮城県気仙沼市、千葉県旭市でおこなった。 国外調査は、継続調査として、台湾において国立高雄海洋技術大学の協力を得て屏東県小琉球、基隆においてカジキ(旗魚)、シイラ、トビウオなどの回游魚漁業・利用実態調査を進めた。また昨年度に引き続き地中海のマルタで1週間にわたって民俗調査を実施し、シイラ(ランプーキ)漁業と食文化、マルタの漁船に関して情報を得ることができ、海洋研究所においてロベルト所長、マーク研究員らと継続的な情報交換をおこなった。さらに、パラオを初めて調査し、回游魚利用の実態や、沖縄からの漁業移住者へのインタビュー等をおこなった。 本年度は、当初の目的に加えて、沿岸地域に大きな被害を与えた東日本大震災に対して歴史地理学、漁業史がどういう役割を果たせるかという課題にも向き合うことになった。早急な結論は出せないが、地道な聞き取りと史料採訪の重要性を訴えながら、研究成果を公にしていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究が2年目となり、海外の台湾、マルタでは複数回の調査をおこなうことができ、現地での人間関係も構築でき、貴重なデータも得られている。童虎山房文庫の調査では、貴重な内容の史料も確認でき、今後分析すべき課題を多く得ることができた。また、研究成果を査読付きジャーナルや紀要、報告書などで公開することができた。したがって(2)の区分に該当すると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
海外の調査地、特にマルタの継続調査をシイラ漁業の一番盛んな8月から9月にかけておこない、乗船調査をおこなう必要がある。東日本大震災被災地への調査も継続して進め、今後は聞き取り調査も実施したい。 また、各地で収集した史料・資料の分析を進め、データ化し、成果を公開する必要がある。
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