2010 Fiscal Year Annual Research Report
「新しい」フィリピン人によるトランスナショナル関係構築の人類学的研究
Project/Area Number |
22720335
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
永田 貴聖 立命館大学, 先端総合学術研究科, 非常勤講師 (80551093)
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Keywords | フィリピン / トランスナショナル / 移民研究 / 文化人類学 / ネットワーク |
Research Abstract |
今年度は、本研究の目的である、「新しい」フィリピン人たちが、移動定着というモデルでは捉えられない、移動することそのものを生活基盤とする実践を検討することについて、日比での調査から以下の点を明らかにした。この研究は、定住を前提とする市民権の在り方、国民国家と個人の関係の在り方を再考する議論が開かれる可能性を導くものである。 特に、今年度は、フィリピンでの、日本国籍及び日本での在留資格取得な人々がパスポート及びビザ取得の斡旋から日本での就業先紹介を行う非営利・営利団体を通じて、来日する過程をこれら団体の動向を意識しながら追跡した。 また、日本においては、京都市を拠点とするPAG-ASAフィリピン人コミュニティでの参与観察を通じて、80年代に多くのフィリピン人既婚女性が来日し、定住した以降に来日する人々の動向、コミュニティ内のフィリピン人の来日経緯が多様化しつつあることについて考察した。すでにコミュニティに集まるフィリピン人たちの中には、上述したような、就業先の斡旋を受けて来日した人々やその二世などが含まれている。これらの「新しい」フィリピン人たちの中には医療法人などが経営する介護看護施設において労働に従事している人々もいる。このような動向は、日比のEPAによる介護看護候補者の来日と定住が停滞している中で、新たな介護看護労働者を確保するという視点からも重要な考察である。また、人々の多くは、日本国籍を持った二世の家族である立場で定住可能な在留資格を取得し、日本において暮らしている。現在、これらの二世たちを受け入れている多くの公立小中学校が二世たちへの日本語支援という問題に直面している。今後、これら問題の動向を継続して追跡することとしたい。
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Research Products
(2 results)