2011 Fiscal Year Annual Research Report
「新しい」フィリピン人によるトランスナショナル関係構築の人類学的研究
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22720335
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
永田 貴聖 立命館大学, 先端総合学術研究科, 講師 (80551093)
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Keywords | 移動 / トランスナショナリティ / 日本 / フィリピン / 在日フィリピン人 |
Research Abstract |
本研究の目的は、「新しい」フィリピン人たちが、移動定着というモデルでは捉えられない、移動することそのものを生活基盤とする実践を検討することである。この研究を通して、定住を前提とする市民権の在り方、国民国家と個人の関係の在り方を再考する議論が開かれる可能性を導くことである。 本研究では、次の3つの問題を明らかにしようとしている。1.複数の事例調査を実施し、日比間のトランスナショナル関係が構築される最新動向を解明する。2.日本国籍、在留資格、比市民権が活用され、日比に跨り社会関係を拡大する過程を分析する。3.80年代、女性芸能人の来日が急増し、現在まで続いているフィリピン人の移動が変化しながらも関連性をもつ動向である。 調査者はフィリピン・マニラ首都圏を中心とした、日本での合法滞在可能なフィリピン人母子の人材派遣業者の実態の把握、京都を拠点とする以上のようなフィリピン人を従業員として受け入れている医療福祉施設を校区とし、フィリピン育ちの児童を受け入れている公立小学校への係わり、以上の様な「新しい」フィリピン人が徐々に増加しつつあり、多様化が進んでいる在京都市のフィリピン人コミュニティPAG-ASAでの参与観察調査、さらに、フィリピンでの在日フィリピン人を家族にもつ人々への個別事例調査から、移動定着というモデルでは捉えられない、移動することそのものを生活基盤とする実践を記述しつつある。また、補足として、既に在住経験が長い人々によって運営されているフィリピン人コミュニティが医療福祉施設で働いている、生活が現状安定しているとは言えない「新しい」フィリピン人を支援するための企画を行うなど、フィリピン人が多様化しつつあることも確認している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日比双方で、参与観察調査、インタビュー調査を行い、9.研究実績の概要の1~3に掲げた具体的分析内容はおおむね順調にすすんでいるといえるだろう。あえて言うとするならば、今後の課題は、フィリピンでの在日フィリピン人を家族に持つ人々の国境を越えた関係の継続方法に関するインタビュー調査を積み上げることにあるだろう。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の課題は、「新しい」フィリピン人が就業し、居住する地域にある公立学校への調査をもとに分析する。本研究が主に拠点とする京都市においても、一部の医療福祉機関がこれらの親を雇用し、親子が施設の付近に居住している。こどもたちを受け入れている公立小中学校では、こどもへの日本語支援、親への日本の教育の理解への活動を行っている。時には長年在住しているフィリピン人結婚移民が講師としてセミナー等を行っている。これらの「新しい」フィリピン人たちは既存のフィリピン人組織とは関係が希薄であり、また結婚移民たちのとの立場の違いや社会関係の相違も顕著になりつつある。本研究では結婚移民たちと「新しい」フィリピン人たちの違いにも注目する。また、今後、この調査では他に調査補助者をアルバイト雇用して、万全の態勢で実地調査を実施したい
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Research Products
(2 results)